1.電気通信事業の規制動向

◆モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ

 総務省は、MVNOの拡大を通じた「競争の加速」と利用者による「通信サービスと端末のより自由な選択」という観点から、これまでの政策をレビューし、現在の携帯電話市場の動向についてフォローアップを行うことを目的とし、2016年10月、「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を開催した。
 同会合では、①スマートフォン料金の動向、②SIMロック解除に関するガイドライン改正後の動向、③スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン適用後の動向、④MVNOの競争環境の動向についてフォローアップを行い、最終的に2017年1月、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」の策定と、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」の改正が行われた。それぞれのガイドラインの概要および適用時期は以下のとおり。

  1. モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針
    1.1 SIMロック解除の円滑な実施に関するガイドライン
     ①端末購入からSIMロック解除が可能となるまでの期間を6カ月から以下に短縮
      1)割賦払いの場合:100日程度以下(2017年8月1日から)
      2)一括払いの場合:当該支払いを確認できるまでの期間(2017年12月1日から)
     ②解約時に原則SIMロック解除(解除の条件・手続電気通信事業の変化と展望を説明)(2017年5月1日から)
     ③MVNO向けのSIMロックの廃止(2017年8月1日以降新たに発売される端末から)
    1.2 スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン
     ①フィーチャーフォン(3G)からスマートフォン(LTE)への事業者間での移行促進(自社内の移行と同等に)(2017年2月1日から)
     ②通信契約奨励金の臨時増額(1月未満の期間限定)による実質的な端末購入補助の適正化(2017年2月1日から)
     ③端末購入者に求める合理的な額の負担の明確化(2年前の同型機種の下取り価格以上)(2017年6月1日以降、新たに発売される端末から)
  2. 電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン
     ①利用者が利用実態等に対応した料金プランを選択できるよう事業者・代理店からの適切な説明をルール化(2017年2月1日から)

 

◆消費者保護ルール(モニタリング)・青少年保護(新フィルタリング)

  1. 消費者保護ルールの充実・強化
     消費者保護ルールを充実・強化する改正電気通信事業法が、2016年5月21日に施行された。改正後の法執行を適切に実施し、制度の実効性を確保するため、消費者保護ルールの実施状況について、総務省および関係者の間で情報を共有し、検討および評価することを目的に、2016年9月および2017年2月に「消費者保護ルール実施状況のモニタリング定期会合」が開催された。
     本会合では、①総務省による定期調査および苦情等分析の実施方法、②調査等を踏まえた消費者保護ルールの実施状況の評価、③評価を踏まえた事業者による自主的な取り組みの促進、④評価を踏まえた制度の必要な見直しに関する提案について検討しており、2017年中には「2016年度の評価」を公表する予定にしている。
     
  2. 青少年保護
     青少年にとっての安心・安全なインターネット利用環境を整備するべく、インターネットを適切に利用するための啓発活動や、青少年を保護するために有効な手段であるフィルタリングサービスについて、携帯電話事業者、OS事業者、保護者等の各関係者の役割を踏まえた検討を行うため、「青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース」が2016年4月に設置された。

 同会合では、①関係者の理解力の向上や普及啓発の重要性に関する事項、②利用者・事業者双方にとって使いやすいフィルタリングの実現に関する事項、③青少年のインターネット利用環境整備(理解力の向上・フィルタリングの活用)のための体制の整備に関する事項が検討され、2016年7月には「青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関する論点とその解決に向けた方向性」が公表された。2016年12月には、本方向性を受けた各関係者の取り組みも報告された。

 

◆放送を巡る諸課題の検討

 総務省は、近年の情報通信技術の発展やブロードバンドの普及等による新しい放送サービスの登場や視聴者を取り巻く環境変化等を踏まえ、「放送を巡る諸課題に関する検討会」を、2015年11月から開催している。
 インターネットによる動画配信の成立により、視聴者がさまざまなデバイスでコンテンツを楽しみたいというニーズが大きくなってきていることや、NHKがインターネットの活用を進めていること等がその背景となっている。日本の経済成長への貢献や市場・サービスのグローバル化への対応、視聴者利益の確保・拡大等の観点から、中長期的な展望も視野に入れた検討を行うものである。地域メディアや地域情報確保の在り方や公共放送を取り巻く課題への対応についても検討を行っている。
 本検討会は2016年9月に第一次取りまとめ案を発表したが、その中で、今後の放送サービスの展開に当たって対応していくべき課題が提示された。具体的には次のとおりである。

  1. 新サービスの展開
    ①スマートテレビの活用
    ②放送通信連携サービスと視聴者利益
    ③4K・8K放送と視聴者利益
    ④放送番組のネット配信
  2. 地域に必要な情報流通の確保
    ①ラジオネットワークの強靭化、難聴対策
    ②テレビジョン放送のバリアフリー化
    ③放送設備の安全、信頼性の確保
    ④放送分野における多言語対応の強化
  3. 新たな時代の公共放送
    ①インターネット活用の在り方について検討が必要
    ②国際放送に加え、インターネットの活用も含め、総合的情報発信の充実・強化について検討を進める
    ③地域放送番組の充実強化、海外展開を行う
    ④インターネット活用業務の財源の在り方について、受信料制度の中での位置付けも含めて検討

 総務省は、この第一次取りまとめ案を受け、2016年10月に情報通信審議会に対し、「視聴環境の変化に対応した放送コンテンツの製作・流通の促進方策の在り方」を諮問した。情報通信審議会は、「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」を設置し調査を行っており、2017年6月を目処に中間答申を、また2018年6月を目処に最終答申を総務省に提出する予定としている。

 

◆NTTの固定電話網が2025年までにIP網へ

2015年11月、NTTは、電話サービスのために用いられている公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)の中継交換機、信号交換機が、2025年頃に維持限界を迎える中で、今後、PSTNを順次IP網に移行する構想を公表した。
 これを受け、総務省は、2016年2月、情報通信審議会に対し、「固定電話網の円滑な移行の在り方」について諮問した。NTT東日本、西日本の固定通信網は日本の基本的な通信インフラであり、現行の電気通信事業法のさまざまな制度の前提になっていることが諮問の理由である。
 情報通信審議会は、2017年3月に一次答申を提出したが、その基本的な考え方を次のとおり述べている。

①固定電話は、地域の住宅・事業所といった拠点との基本的な通信手段であり、社会経済活動に不可欠な基盤として、IP網移行後も必要である。
②メタル電話から、0AB~JIP電話(光IP電話)や光ブロードバンドへの移行を見据えた競争環境整備を促進する一方、過度な負担発生を回避しつつ、移行に直ちに対応できない利用者に対しては適切な補完的措置(メタルIP電話等)を提供する。
③「利用者」および「事業者」の視点を重視して、個別課題の具体的方向性等を整理する。

 今後、情報通信審議会は、2017年夏または秋に二次答申として最終形に向けた円滑な移行の在り方を総務省に提出する予定としている。

 

◆新世代モバイル通信システムの技術的条件

 2016年10月、総務省は情報通信審議会に対し、「新世代モバイル通信システムの技術的条件」について諮問し、情報通信審議会の下に、新世代モバイル通信システム委員会が設置された。
 これは、新世代モバイル通信システムとして世界各国・地域で研究開発や実証が行われている第5世代移動通信システム(5G)が、「超高速」だけでなく「多数同時接続」、「低遅延・高信頼」といった特徴を有していること、5GがUHF帯からEHF帯(ミリ波)までの幅広い周波数帯の活用が見込まれているとの観点から、IoT時代に対応した新たな無線システムの早期実現や将来の電波利用ニーズのさらなる増加への対応に向けて、新世代モバイル通信システムの基本コンセプトを明確にした上で技術基準を策定することを目的としている。
 新世代モバイル通信システム委員会では、5Gの基本コンセプト、ネットワーク構成等、5Gの技術的条件の前提となる事項に関する検討を進め、2017年夏頃に一部答申を行う予定としている。2017年夏以降は、5Gの導入が想定される周波数帯ごとの技術的条件を順次検討する予定としている。

 

◆個人情報保護法改正を踏まえた対応

 2015年に改正された個人情報保護法が2017年5月30日に全面施行された。これにより、従来は各所管官庁が個人情報を取り扱う分野ごとに監督していた体制(主務大臣制)から、民間部門については、個人情報保護委員会の一元的な管理体制へと移行する。
 従来、個人情報保護法の下で各省庁が定めていたガイドラインについても、その役割がより限定的なものとなる。個人情報保護法のもと、個人情報保護委員会によるガイドライン、特定分野ガイドラインが定められる。加えて、個人情報保護法の解釈に資するための事務局レポートが個人情報保護委員会から公表される。また、認定個人情報保護団体の活用がこれまで以上に進められる予定で、消費者の意見を踏まえた個人情報保護指針のもと、同指針を遵守させるための対象事業者への指導・勧告が義務化された。
 特定分野ガイドラインは、特定分野における事業の特殊性を鑑みたガイドラインである。電気通信事業分野も、この特定分野の一つに挙げられており、従来から独自のガイドラインが定められていた。
 2015年11月より、個人情報保護法の改正動向を踏まえて、同分野の所管官庁である総務省は、ガイドライン改正の検討のため、改正個人情報保護法等を踏まえたプライバシー保護検討タスクフォースを設置した。そこでは、既定の整合性の確保、要配慮個人情報・小規模事業者の取り扱い等について検討が行われた。併せて、昨今の動向を踏まえ、「電気通信サービス」の範囲、位置情報・スマートフォンアプリの取り扱いについても議論がなされた。
 2016年7月に取りまとめの方向性が示され、2017年1月に改正案を公表、パブリックコメントにかけられた。このパブリックコメントの結果を踏まえた最新の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」は2017年4月18日に公開された。改正個人情報保護法および個人情報保護委員会のガイドラインの規律および内容を反映させ統一性が確保された一方で、通信の秘密の保護等の電気通信事業法に基づく規定やプライバシー保護の観点からの規定等、電気通信分野に特有の規定については基本的に維持された。