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Title: 給与のデジタル払い解禁の現状
Updated: 2021/11/18
Category: 市場環境分野
Areas: 日本

給与のデジタル払い解禁の現状

本稿は、給与のデジタル払い解禁の議論について、過去の経緯及び現在の論点を整理し、紹介することを目的としている。
まず、給与のデジタル払いについて、2017年当初は外国人労働者向けという側面が強い施策となっていた。しかし、時を経るにつれ、広く国内雇用者の利用を想定した議論になっていく。この流れは、同時期の政府のキャッシュレス決済普及施策の主な対象者が、訪日外国人から、国内ユーザーへと移っていく時期と重なっている。
国内で、給与のデジタル払いが解禁されると、銀行口座などを経由せずにデジタル通貨による給与の支払いが可能となり、利用者の利便性が向上することや、取引データの活用が進むことが期待されている。しかし、実際には、政府が公表している2019年および2020年の「成長戦略フォローアップ」において、各年度中のできるだけ早期の制度化を図るとしているが、2021年現在もまだ具体的な日程は明らかになっていない。
そもそも、なぜ現在はデジタル通貨での給与支払いができないのであろうか。それは、現在の労働基準法では、給与は現金で直接支払われることと定められているためである。多くの人が利用していると考えられる、給与の銀行口座への振り込みについても、実際には例外としての扱いとなっている。銀行口座への振り込みが可能である理由は、銀行業で資金保護が定められていることに加え、換金性が高いことが挙げられる。よって、まずはデジタル通貨を扱う資金移動業者が、この点について銀行業者と同じ水準にすることが必要となる。また、資金移動業者特有ともいえる課題も存在する。それは、不正引き出し等への対応、口座への滞留防止、監督指導体制の明確化、個人情報の保護、振込先の本人同意といった課題である。これらの課題について、現在も厚生労働省を中心に議論が進んでいる。
そして、仮に給与のデジタル払いが解禁された場合、どれほどの利用意向があるのか、弊所で実施した家計調査のデータを用いて紹介する。集計の結果、現状では約4割の人が利用したいと考えている。前述の課題を解消し、利用者が安心して利用できる環境の整備が望まれる。

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