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Title: 台湾・香港のWiMAX動向
Updated: 2007/09/19
Category: 市場分析
Areas: 香港 台湾

台湾・香港のWiMAX動向

台湾NCC(国家通信放送委員会)は2007年7月、無線ブロードバンドアクセス(WBA)免許の入札を実施し、計6社が台湾南北の地域別免許各3件を1件ずつ落札した。落札者の中には既存の携帯電話事業者の遠伝電信(Far EasTone)や威寶電信(Vibo Telecom)、PHSの大衆電信(FiTel)等が含まれるが、携帯電話市場最大手の中華電信と、第2位の台湾モバイルは落札を逃した。
今回の入札では各社が落札できる免許の数は1件のみに制限されたため、今後、全国サービス展開のためのパートナー探しが、落札者の間で活発化する見通しで、北部の免許を落札した威寶電信と東訊(通信機器メーカ)によるJVの威邁思(Vmax Telecom)が、南部の威達有線電視(CATV)との提携を逸早く発表した。また、大衆電信はWiMAXの設備投資に備えて増資を予定しており、米Sprint NextelやIntel等の外資をパートナーに迎える計画である。
各社は早ければ2008年下期からサービスを始める計画であるが、遠伝電信はWiMAXは短期的には儲からないだろうと、慎重な見方をしている。
台湾のインターネットアカウント総数のうち、3GやPHS等の携帯インターネットのアカウント数が占める割合は65%に上るが、実際に携帯インターネットを利用している人の数はそれほど多くなく、携帯インターネットの対人口普及率は8%程度でほぼ横這いが続いている。一方、Wi-Fi等の無線LANは、台湾経済部が主導する「M台湾」プロジェクトにより携帯インターネット以上に成長している。また、固定ブロードバンド市場は中華電信の独占的状態であるが、WiMAXは中華電信のADSLやFTTHに対抗する有力な代替ローカルループとしても期待される。
WiMAXが成熟するにはまだあと1~2年を要するだろうと考えられている。
台湾交通部の当初の案でも、最初に全国免許を2件出し、数年後に市場の状況を見て、免許を追加する考えであったが、製造業の振興策を担う経済部が、なるべく多くの免許を早期に出すよう強く要望し、6件の地域免許を出すことになった。WiMAXに対する設備投資を促進し、台湾メーカの製品開発力を高め、世界のWiMAX関連製品市場における主導権を先行獲得するというのが狙いで、国産技術であるWiBroの世界普及のために商用化を急いだ韓国と、事情は似ている。
しかし2年後には全国免許が出る計画で、今回免許を落札した事業者たちも市場が立ち上がるのを悠長に待つ余裕はない。中華電信と台湾モバイルは、実は2年後の全国免許取得を見込んで、今回は見送ったのではないかという見方も出ている。
当面、中華電信と台湾モバイルがWiMAX市場から締め出されたことで、3G携帯電話サービスとWiMAXの間の熾烈な競争が予想される。また固定ブロードバンド市場でも中華電信が価格や品質面で競争を仕掛けてくる可能性があり、様々な面でWiMAX事業者たちは厳しい戦いを強いられそうである。
一方、香港では目下、無線ブロードバンドアクセス免許の発給に向けて、OFTA(電信管理局)が免許要件等を検討中である。
香港ではドミナント固定電話会社であるPCCWに対するローカルループのアンバンドル義務が、2008年6月末で撤廃されることが決まっており、競争事業者は有力な代替ローカルループとして、無線ブロードバンドアクセスに対し高い関心を抱いている。
OFTAは無線ブロードバンドアクセスのために2.3GHz帯を、一事業者当り最大30MHz幅、オークションにより割り当てることを検討している。免許の発給時期は2008年中の予定である。

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