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Title: 子どもの携帯電話利用の現状と今後について ~大いなる潜在性と普及に向けた課題~
Updated: 2007/10/17
Category: 市場環境分野
Areas: 日本

子どもの携帯電話利用の現状と今後について ~大いなる潜在性と普及に向けた課題~

携帯電話とPHSを合わせた台数は2007年初めに1億台を超え飽和感が強まるなか、小中学生のジュニア層では携帯電話の普及率はまだまだ低く、社会動向の変化や防犯意識の高まりから今後さらに普及率は上昇する可能性がある。ただ、普及とともに生じる問題も数多くあり、携帯電話会社にとっては社会的なコンセンサスづくりのために、地域社会との連携がこれまで以上に必要となろう。
(1)ジュニアの携帯電話普及率動向と親が持たせる理由
総務省調査によると、2006年末に6~12歳が携帯電話を持っている割合は約25%程度であり、ここ数年、他の年代に比べて普及率の上昇スピードは比較的緩やかではあるが着実に伸びてきている。また、学年別に見ると小学校4年生頃から急激に普及率が高くなっている。携帯電話を子どもに持たせたきっかけは、学校・自治体など地域からの子どもの防犯対策推奨や、子どもの安全への不安など、防犯に関する理由が上位に列挙されている。子どもを取り巻く環境悪化に対する親の不安が、子どもへの防犯対策としての携帯電話普及を促進している様子が分かる。
(2)子どもを取り巻く近年の環境変化
子どもを取り巻く社会環境変化を検証すると、今後はより防犯対策を意識せざるを得ない状況にある。子どもを対象にした犯罪のうち、平成11年~12年頃から強制わいせつ、暴行、傷害など、凄惨な事件が急激に増加しており、報道でも大きく扱われることが多かったことから、自治体や保護者の間で子どもの防犯対策に関する意識が急速に高まっている。
一方で、子どもが夕方から夜遅くにかけて塾通いなどのため1人で外出する機会は以前より増えている。昨今の中学受験ブームによって首都圏での中学受験率は平成11年頃には12~13%程度であったものが、平成19年にはおよそ17%台にまで急上昇しており、小学校高学年からの塾通いは親の教育熱の過熱により益々増えそうな勢いである。
さらに、末子が6~8歳で約50%、同じく9~11歳で約6割弱の母親が何らかの仕事を持っている。今後少子高齢化による労働力人口の減少と長期的な好景気の持続により、子どもを持つ母親の就業が社会的にも非常に期待されており、企業も用条件を整えつつある。このような背景から今後も母親の就業率は上昇するため、親の子どもの安心安全に対する意識はより高まるだろう。
(3)ジュニア層の今後の普及率と普及への課題
ジュニア層(特に6~12歳の小学生)の携帯電話普及率は未だに25%程度と低いが、携帯電話を持たせている親の主な目的は子どもの“安心安全”のためであり、防犯ブザーの普及率に見る防犯意識の高まり、塾通いする小学生の比率や母親の就業率の高まりなどを考慮すれば、この層の普及率が2人に1人となる日も遠くない。
これからのジュニア層の携帯電話普及促進には、単に機能・性能の向上や料金水準の引下げのみならず、例えば、学校に持ち込んだ場合のルール、いざという事態での子どもの対処方法の訓練、子どもが有害情報によるトラブルに巻き込まれないよう親子への対処法の指導など、学校・保護者・自治体(警察など)・携帯電話会社等の関係者が連携し、社会的なコンセンサスづくりを同時に進めてゆくことが、これまで以上に必要となるだろう。

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