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Title: フランステレコムがインドのICT企業GTL Ltd.の部門を買収
Updated: 2007/11/14
Category: 市場分析
Areas: インド

フランステレコムがインドのICT企業GTL Ltd.の部門を買収

2007年7月11日、フランステレコム(以下「FT」)のグループ会社Orange Business Servicesは、インドのICT企業GTL Limited(以下「GTL」)の企業サービス部門とマネージドサービス部門を現金で買収することで同社と合意した。これは、BTに競り勝った結果でもあった。
Orange Business Servicesはインドに同時点で既に約1000人のマンパワーを持っているが、インドの重要性、将来性を見込み、顧客宅内ネットワークのマネジメント分野に一層踏み込むため、さらに力を入れ始めた。Orange Business ServicesはGTLの450超の法人顧客も受け継ぐ。
本稿では、GTLについて紹介しつつ、本件の背景等について考察した。
GTLの2007年3月期年次報告書(19th Annual Report 2006-07)には、同社はインド最大のネットワークサービスプロバイダであると記述されている。
GTLは2007年3月末現在、インドの23サークルに拠点を持ち、25カ国以上でビジネス展開している。
同時点で、通信事業者向けに35以上のセルラー網、約20,000のセルサイトを構築し、企業顧客については、約500社向けにネットワーク構築を手がけた。51,000以上のBPO(Business Process Outsourcing)用作業席も設置している。同社はマルチベンダー方式を採用し(ベンダー中立)、各ベンダーと提携契約を持ち、迅速で効率的な問題解決を図っているとしている。
2007年3月期年次報告書では、同社のビジョンとして「世界最大のネットワークサービスプロバイダになること」が掲げられている。特に今後は通信事業者向けへの集中を図ることとしている。
同年次報告書には、下記のとおり幾つかの課題が記載されている。その手段として、新たなスキル獲得のためのM&Aが重要な選択肢であるとしている。
○ 3年以内に純利益マージン(net margins)を10%以上にする
○ マージンの高い分野(例:ネットワーク計画・デザイン、ネットワーク運用保守、プロフェッショナルサービス、インフラマネジメント)からの寄与度を20%から40%に高める
○ 3年以内にインド以外の地域からの寄与度を35%から60%に高めるGTLによるM&Aの最近の具体例としては、2006年10月に買収したGenesis Consultancy Limited(本拠英国)が挙げられる。
今般のOrange Business ServicesによるGTL社部門の買収の背景であるが、同社は、Global One、Equantという国際系事業者の系譜上にあり、外国での“ローカル”密着度には他の競合事業者同様、なお課題があると考えられる。
将来のグローバルな雄飛が期待されるインド企業のネットワークサポートには、現地企業の買収が一つの有効手段となる。フランスを含む欧州のMNCsの今後のインド進出強化を併せ考えると、シナジー効果も期待できる。
一方、GTLにとって今般の部門売却は、より専門的で利益性の高い分野に集中していくための、同社リストラプログラムの一環である。
同社は、「通信事業者向けのネットワークサービス分野」へ集中していきたいと考えており、通信事業者のネットワークライフサイクルの回転とそれに係わるベンダー(OEM)の全製品を横断する技能を付加していきたいとしている。
Total Telecomの2007年9月1日付け記事(Global network services: Playing the field)はOvum社の最近の調査報告書をふまえつつ、概要以下を述べている。
○ グローバルなマネージドサービスを提供しているキャリアは、依然、「接続性(connectivity)」を重視し、専門にしている。彼らは、まだ顧客LANに及んでおらず、アプリケーションマネジメントが不十分である。経験を積みつつあるが、デスクトップとLANに関してエンドユーザの信頼を得るには、まだ長い道のりがあるようだ。
○ 国際ネットワークの接続性の点で、SIに対する顧客評価が依然低いからといって、キャリアは安心できない。2007年1月、EDS社はEuropean Space Agencyと、WAN/LAN、アプリケーション、サーバの提供にかかわる5年契約(9700万USドル(153億円))を交わしたが、これはキャリアへの警告灯と言えよう。
日本に目を転じると、本邦における地方分権化方針と新興国経済の先進化を背景に、MNCsの活動のローカル化とグローバル化の同時進行が目につく。MNC向けのサービスでは、外国の部分を含め、顧客LANのマネジメント分野にどのように喰い込めるかが差別化の一つのポイントとなっている。
通信事業者にとって、M&Aという選択肢を含め、内外のシステムインテグレータとの関係強化とその方法が重要な課題となっている。

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