2021年の欧州通信業界の展望
サマリー
●情報通信政策全般
・EECCは、2020年12月21日が国内法化期限だが、新型コロナ影響もあり遅延。多数の加盟国にて2021年に持ち越し。
・EECCにより各国でブロードバンドユニバーサルサービスが導入され、特にルーラルのギガビット網展開が促進される。
・Brexitは、移行期間終了直前にようやく合意しノーディール回避。通信事業者やユーザーにも大きな影響はない。
・AI戦略は、ハイリスク分野に焦点を当てた規制アプローチを検討中。2021年1~3月に立法提案予定。
・データ戦略は、EU特有の問題である「データの断片化」に対応し、官民のデータ共有を促進。2021年中に立法提案予定。
・情報保護関連では、2017年以来遅延が続くeプライバシー規則は、目途が立たないまま2021年も合意努力を継続する。
●5G関連動向
・商用サービスは2020年12月時点でEU28か国中(英国含む)19か国が開始。周波数割当の進捗は2020年9月末時点で全体の26%。新型コロナ影響等により顕著な遅れ。欧州の国際競争力の観点でも早急な5G網整備が必要。
・セキュリティ対策では、中国サプライヤの取扱いを巡り2021年も綱引きが想定され通信事業者の負担が増す。
●プラットフォーム・競争法
・EU各国で独自のデジタル課税が進む一方で、OECDレベルでの合意を図る。結果次第で米国との課税応酬が懸念される。
・欧州委員会がデジタルサービス法・デジタル市場法を2020年12月に採択し、2021年初頭から欧州議会等で審議予定。
・英国、ドイツでも競争促進政策が進む。2021年は欧州においてプラットフォーム政策が大きく進展すると想定。
・英国3UK・O2合併の欧州委員会による阻止を違法とした欧州司法裁判所判決について、今後、最終司法判断が下される。時期は未定。結果次第では、日本の通信政策(特に4to3合併)への影響も考えられる。