5年前に購入したスマホがそろそろ買い替えどきになったので、これまでの「スマホ人生」を振り返りながら現時点における最善の決断をすることを目指し、新しいスマホに買い替えることにした。本コラムではその顛末を2回に分けてお届けしながら、当地のスマホ事情の一端を紹介したい。さらにこの機に、前々から気になっていたことの解明にも努めてみようと思う。それは、スマホを買うとしたらオンラインで買うのがいいか、ショップで買うのがいいかということ。もちろんそれは個人個人のニーズや好みや環境などで変わってくることではあるが、実は筆者自身は「オンラインで買った方がいいに決まっている」と内心思っており、ショップで買うメリットがどこにあるのかというところをこの際はっきりさせておきたいというのが正直なところだ。なお本稿で紹介するスマホ事情は概ねは2023年7月から8月にかけてのもので、iPhone 15シリーズが出る以前のものである。
我が家のスマホ事情
我が家では家族の分も含め、T-Mobileの「Magenta 55+」というプランで3回線利用している。これは最新の「Go5G 55」と内容的には同等のプラン。「55」というのは家族の中に1人でも55歳以上の人がいれば利用できる、いわゆる「シニア割」。1アカウントに4回線まで含められる。音声、データ(高速データは100GBまで)、テキストが無制限で、月額料金は回線数によって異なり、3回線の場合は1回線あたり40ドル。料金を自動払いにすることで1回線あたり月々5ドル割引されて、3回線で月々105ドルの支払いとなっている。もし「シニア割」が利用できなかったとしたら、「Magenta」なら3回線で月額140ドル、最新の「Go5G」なら月額170ドル(今なら3回線目無料のプロモーションがあるので月額130ドル)になっていたところだから、「シニア割」の恩恵は大きい。
このプランにはひと月あたり5GBまでの高速モバイルホットスポットデータが含まれ、Netflixのベーシックプランが無料、AAA(米自動車協会、日本のJAFに相当)の会費が1年間無料、Apple TV+が6か月間無料といった特典も付いている。毎週火曜日には「T-Mobile Tuesdays」と称してさまざまなグッズや飲食物やサービスなどが無料・割引提供されるのも楽しみの1つ。そのお陰でMLB(プロ野球)やMLS(プロサッカー)のほぼ全試合がオンラインで無料視聴できるのもありがたい。
海外でも日本を含む215の国・地域でテキストとデータ(256kbps)が無制限に使える、「Wi-Fiコーリング」が使える(海外でもWi-Fi利用中は米国内にいるのと同様に米国宛の通話が無料になる)、機内Wi-Fiが無料で使えるなどのメリットもある。日本に行ったときにはローミングをオンにすると追加料金なしである程度使えるが、データ速度はあまり速くないため、webサイトがなかなか開かないといったことが頻発する。やはり日本に行ったときは日本のSIMに差し替えて使った方が快適だ。
筆者の行動半径では、T-Mobileの回線品質は必ずしも良いとは言えない。自宅ではスマホの画面には一応「LTE」と表示されるものの、下りが2Mbps、上りは700kbps程度。とても満足できるレベルではないが、普段はWi-Fi経由で固定インターネットを使うのでそれほど不便はない。外出先では場所により驚くほど速かったり、とても使える状態ではなかったりと格差が大きいが、概してAT&TやVerizonより低速のことが多い。これも最近は外出することも少なくなってきたので大きく不便を感じることは少なくなってきている。
10年程前にサンフランシスコでスマホを買い替えたときには、キャリアをSprintからVerizonに変更した。その理由はサンフランシスコ周辺の町に引っ越してSprintのカバレッジが極端に悪くなり、4Gがほとんど使えなくなってしまったからだ。引っ越した先は陸の孤島と言っても過言ではない地域で、どのキャリアも電波が弱かったが、かろうじてVerizonだけが何とか使える程度のサービスを提供していた。料金は4GBをシェアして3回線で月額190ドル。これでも他社より安めだった。
ところがその1年後、T-Mobileのカバレッジが改善していることがわかった。同社が「テストドライブ」というサービスを始めたお陰だ。これは当時最新のiPhone 5sを7日間無料で貸し出し、その後無傷で返却すると費用は一切かからないというもの。これを利用して自宅や周辺で使ってみたら、カバレッジは良好で速度はVerizonよりも3倍位速くて驚いた。折を見てT-Mobileに乗り換えようと目を付けていたところ、4回線で月額100ドルというプロモーションを目にしたのですぐに飛びついた。
当時は2年契約が主流だったが、キャリア間の乗り換えプロモーションが活発で、早期解約料や端末残債を乗り換え先のキャリアが負担してくれたので、キャリア間の移動は比較的容易で、1年ごとに変更することも難しくなかった。T-Mobileに乗り換えた後も、さらに他社に乗り換えてみたこともあったが、回線品質に大きな問題がなく、無料の海外ローミングなどの特典も捨て難く、さらに料金が一番安いというのが決め手となり、結局T-Mobileに落ち着くようになった。
スマホが買い替えどきになった
現在使用中のスマホ3台のうちの1台がそろそろ買い替えどきになった。何か不具合があるなどの理由ですぐに買い替える必要があるわけではないが、いつ故障してもおかしくない状況にあると想定されるからだ。
現在使用しているスマホはiPhone XS、iPhone SE(第2世代)、iPhone SE(第3世代)の3台で、いずれも購入した時期が異なっている。iPhone XSは2018年9月に購入したもの。購入当時は3台ともiPhone XSだったが、そのうち1台が2020年9月に故障してiPhone SE(第2世代)に買い替え、もう1台は2023年5月にやはり故障してiPhone SE(第3世代)に買い替えた。
実は後者のiPhone XSの故障は落としたり水没したりといったユーザ側の落ち度はない。OSのアップデートの途中でまったく動かなくなり、それ以来立ち上がらなくなってしまったものだ。ネットで調べながら修復・復元を試みたがだめだった。Appleストアに行って相談したところ修理不能と言われ、保証プランにも入っていなかったことから、全額自腹で買い替えるしかないことになった。すぐに使う必要があったので、やむなくその場で一番安いiPhone SEを定価で購入したという次第だ。その際、Appleストアのスタッフとの雑談の中で、iPhoneは5年位経つと故障が多くなるとの発言を耳にした。家電など多くの製品が一定期間後に故障が多くなるという話は聞いたことがある。「iPhoneよ、おまえもか」と心の中で叫んだ。
上記の話からすると、手元に現存する唯一のiPhone XSはそろそろいつ故障してもおかしくない状況になっているはずだ。故障してからではじっくりスマホ選びをしていられないだろうから、事前に余裕を持って買い替えをしておくのが賢明だ。このiPhone XSに代わるスマホとしては、ハイエンドのiPhoneの最新モデルにしたいとの希望があり、世間の評判などを考慮してiPhone 14 Proを候補とした。これをできるだけ好条件で入手することが今回の大きなミッションだ。
ということで、スマホの機種についてはほぼ気持ちは固まった。次回はいよいよスマホの購入に踏み切ることにする。
KDDI総合研究所特別研究員 高橋 陽一
関連レポート・ブログ
サンフランシスコでスマホを買い換える(2013/12/19)
https://rp.kddi-research.jp/article/RA2013017
Dan高橋のIT散歩「アリゾナでスマホを買い替える(その1)」
https://rp.kddi-research.jp/blog/dan/archives/22617