YouTubeの発砲事件は衝撃的


YouTube本社で起こった発砲事件はいろいろな意味で衝撃的だ。

4月3日、YouTube本社で発砲事件が起こった。最初の衝撃は身近な場所で起こったこと。YouTubeの本社はサンフランシスコ郊外のサンブルーノ市にある。去年の暮まで住んでいた場所に近い。散歩でYouTube本社の周辺をうろうろしたこともある。発砲事件はアメリカでは珍しくないが、身近な場所で起こるとショックが大きい。

この事件でYouTubeの本社はサンブルーノだったんだと初めて知った人も少なからずいたはずだ。これでサンブルーノが一躍有名になった。物騒な事件で有名になるのは不名誉なことではあるが。

被害者が搬送された病院が「ザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院」だった。サンフランシスコ総合病院にいつの間にかFacebookのCEOの名前が付いていたのはやや衝撃的だった。

さらにこの事件に関しては、当初、誤情報や偽情報が出回って錯綜した。

通常、この種の銃撃事件が起こると、典型的な犯人像としては差別意識の強い白人男性が浮かび上がる。今回の事件が起きて、まだ犯人が誰だかわからない段階で、「もしこの事件の犯人が極右の白人男性でなかったら針千本飲む」とツイート(今は削除されている)した人がいた。

その後明らかになった情報によると、犯人はイラン人の女性だった。上記のツイートをした人はさぞ衝撃を受けたことだろう。針千本飲んだかどうかは確認されていない。

当初、銃撃された男女3人のうちの少なくとも1人が犯人と顔見知りだったとも報じられた。現場の2人の警察官がそう語ったとCNNが伝えた。この情報により、事件の原因は恋愛関係のもつれだろうと想像した人は少なからずいたはずだ。

ところがその後、犯人の女性はユーチューバーではあるが、YouTubeの従業員とは無関係だったと報じられた。現場の警察官の情報は何だったのかと衝撃を受けた人は多かったことだろう。

犯人の女性はビーガン(完全菜食主義者)で動物愛護の活動家でもあり、その関連の動画をYouTubeに投稿するために複数のチャンネルを開設していた。

事件に至った動機はまだ解明されていないが、犯人はYouTubeに対してひどく腹を立てていたそうだ。YouTubeが彼女の動画を視聴制限したり削除したりしたために、登録者数は減るわ、報酬は激減するわで、予定がすっかり狂ってしまったらしい。

もしそれが原因で拳銃を持ってYouTube本社に乗り込んだのだとすれば、これは由々しき衝撃的な社会現象だ。今後も同様の事件が起こる恐れがある。

今回の事件ではまた、衝撃的なフェイクニュースも出回った。「この女性が犯人だというのは真実から目を逸らせようとするためのフェイクニュースだ。真犯人は元ユーチューバーのSam Hydeだ」とツイートした人がいた。

ご丁寧にも、この真犯人とされる人物がYouTube本社でライフルを抱えて立っているのを捉えたセキュリティカメラの画像を投稿したツイートまで現れた。

さらに、この事件の背後にいるのはユーチューバーのMatt Jarboだとして、その写真を投稿したツイートも出回った。犯人はまだ逃走中との情報も投稿された。

他にも多数の偽情報が出回った。要するに、事件直後、Twitterはフェイクニュースで溢れ返った。それぞれのフェイクニュースで犯人だとされた人はさぞ衝撃を受けたことだろう。

事件の解明が進むにつれて明らかになる真実もあれば、当初明らかにされた真実が後で何かの都合でかき消されることもありえないことではない。当初出回った情報が必ずしも真実とは限らないし、また必ずしも誤情報・偽情報とは限らないとも言える。

何が真実かがホントにわかりにくいという意味でも、衝撃的な世の中だ。