AT&Tがメディアの重鎮を失う


AT&TのTime Warner買収が確定したと思ったら、傘下のメディア会社の幹部離散が相次いでいる。

AT&TはTime Warnerを買収した後、Time Warnerから名称変更したWarnerMediaの下、傘下のメディア会社をAT&T色に染めるべく組織再編や体質転換に取り組んでいたが、司法省が控訴したことで、一旦中断していた。

2月26日に控訴裁が、司法省の訴えを退ける判決を下し、司法省はその判決に対して再考を求めないと表明したことで、 AT&TのTime Warner買収が確定した。すなわち、AT&Tの組織変革活動が再開することになった。

これを待っていたかのように、WarnerMedia傘下のメディア会社の幹部離散の動きが相次いだ。

The Wall Street Journalなどによると、HBOのCEOのRichard Plepler氏とTurnerの社長のDavid Levy氏が辞任の意向を示した。両者ともメディア業界では重鎮と目され、社内外で大きな力を発揮し実績を積み上げている。

Plepler氏は、2月28日、スタッフ宛のメモで辞任の意向を伝えた。同氏は2013年から同社のCEOを務めていたが、それ以前には広報担当役員を務めるなど、27年間にわたりHBOの成長と繁栄に尽くしてきた。

同氏がCEOとして手腕を発揮していた間に、HBOはストリーミングサービスのHBO Nowを開始したり、『ゲーム・オブ・スローンズ』や『シリコンバレー』を大ヒットさせたり、他にもエミー賞を受賞するような作品を数多く出したりと、プレミアムチャンネルとしてのHBOの存在感と価値を高めた。

同氏は以前はTime WarnerのCEOだったJeff Bewks氏の下でやりたいようにやらせてもらっていたが、AT&Tの傘下になってからは、WarnerMediaのCEOとなったJohn Stankey氏が、「もう思いどおりにはさせない」と口を挟むようになった。

AT&Tの狙いはHBOを通じて、コンテンツを量産するNetflixに対抗すること。一方、Stankey氏は量より質を重視するという考えで、Stankey氏とはしばしば対立した。

AT&TはHBOとTurnerを統合して、そのトップにNBCの会長やCBS傘下のShowtimeのCEOを務めたことのあるRobert Greenblat氏を迎え入れる方向で調整を進めていた。

控訴裁の判決でAT&TのTime Warner買収が確定したことで、「辞めるときが来た」とPlepler氏は決意する。

まるでHBOの中で『ゲーム・オブ・スローンズ』が繰り広げられているようなもの、とCNBCが伝えている。

まさにドラマのような展開だ。