出前にチップを払うのか


出前サービスではチップを払うべきかどうか迷うことが多い。

アメリカはチップ社会なので、さまざまな場面でチップを払うことになるが、払うべきかどうか迷うことも少なくない。

なお、基本的に、チップは良いサービスをしてもらったときに感謝の気持ちを表わすという意味合いなので、サービスが悪かったときには払わなくてもいいという大原則があることは言うまでもない。

ちなみに、サービスが良かったか悪かったかの判断には主観的な要素が入り込むことは避けられないが、もし良くも悪くもなかったと感じたら、すなわちそれほどいいサービスではなかったが特に大きな問題もなかったような場合には、チップを払うのが一般的なマナーだ。

レストランなど、チップを払うのが当たり前になっている場面ならそれほど迷うことはないだろう。

MoneyUnder30’sによれば、チップの金額は、レストランの場合、基本的には15-18%、もしサービスが良かったら20%、あまり良くなかったときでも10%は支払うのが一般的だ。

では出前サービスはどうか。出前サービスの配達人は、注文を取るでもなく、顧客にお愛想を言うでもなく、その他レストランのウエイターに比べれば大した仕事はしていないように見える。それでもチップは払わないといけないのかという疑問を感じている人は多い。

上記のMoneyUnder30’sによれば、出前サービスでもチップを払うべきで、金額は10%が基本で、最低でも1ドルは支払うのがマナーだということだ。

ところが最近は、さまざまな出前サービスが登場して、支払いもアプリで簡単にできるようになっていて、状況は簡単ではなくなっている。アプリによっては配達料が別途取られる場合がある。そんなときにもチップを払うべきかどうかが悩ましい。

アプリにもよるが、たとえばUber Eatsでは配達料がかかる。その場合、Ridestarによれば、配達料とは別にチップを払うのが一般的だそうだ。

Uber Eatsでは、通常、料理の金額に加えて5ドル程度の配達料がかかるが、これは全額がドライバーに行くわけではない。Uberとドライバーで分け合う仕組みで、ドライバーの取り分はごくわずかしかないことが想定される。

その上、ドライバーは正社員ではなく請負人なのだから、車の維持費やガソリン代や保険料などは自前で賄わなければならず、もしチップがもらえないとなると生活にも困る恐れもあるので、チップを払うことを勧めている。

チップの金額は、レストランの基準を当てはめてもいいが、職場などで大人数で注文したときなどは金額的に大きくなるので、レストランの基準ではチップが多くなり過ぎることがある。

Uber Eatsのアプリでは1-3ドルのチップを支払うオプションが表示されるので、その範囲で支払えばいいとのことだ。Uber Eatsではチップは全額がドライバーに行くので、少額でも足しになるとしている。

同様の出前サービスでもDoorDashの場合は少し事情が違う、とTechCrunchが伝えている。

DoorDashの場合、配達1件につきドライバーには、会社からは1ドルが支払われ、それに加えて顧客からのチップが全額ドライバーのものとなる。

さらに配達1件ごとに最低報酬額が決められ、もし顧客がチップを払わなかったり金額が少なかったりしたときには、最低報酬額を満たすよう、会社が差額をドライバーに支払うことになっている。

DoorDashのドライバーの報酬内訳の例(TechCrunchより)

ドライバーは事前にその最低報酬額を確認した上で、その仕事を引き受けるかどうかを判断することができる。安過ぎると思えば断ることもできる。

これは一見、ドライバーにとっては安定した報酬が得られ、安心して働けるいい方法ではないかと思われるが、そうでもないようだ。

チップの金額が十分に多いときは会社はドライバーに1ドルしか支払わなくてよいからだ。すなわち、チップの金額が多いときや少なくてもゼロでないときは、会社は最低報酬額の全額をドライバーに支払わなくて済むことになる。

これは言い換えれば、顧客が払ったチップの一部を会社がピンハネしているということだ。

こんな実態は不当だとして、労働者団体が反対運動を起こしている。ドライバーへの報酬額を最低でも時給15ドルとし、他に業務に要した費用を精算してくれるよう、会社側に労働条件の見直しを求めている。

そして、チップを支払う側のユーザに対しては、チップはアプリ上では支払わず、現金で直接ドライバーに渡すよう呼びかけている。

それにより、会社側はチップが払われていないものとして処理するので、最低報酬額の全額をドライバーに支払うことになり、ドライバーは最低報酬額とチップの全額を受け取ることができる。

もしそれでドライバーが十分な報酬を得ることができ、会社側も利益を出して事業が継続できるなら、それが一番いい方法なのだろう。

しかし、どうもあまりスッキリしない。チップ社会というのがどうも馴染めないからかもしれない。