NVIDIAがArmを買うと厄介なことに


NVIDIAがArmの全株式をソフトバンクから買い取ることで合意したが、これはいろいろと厄介だ。

NVIDIAソフトバンクグループは9月13日(日本時間の9月14日)、ソフトバンクグループが保有する半導体設計大手のArm Limitedの全株式を半導体メーカーのNVIDIAに売却することで合意したと発表した。

買収金額は最大で400億ドルということだが、その取引方法がややこしい。契約時にArmに20億ドルを支払い、クロージング時にソフトバンクグループに100億ドルが現金で支払われ、215億ドルがNVIDIAの普通株式で支払われる。

これによりソフトバンクグループはNVIDIAの株式の6.7%〜8.1%を保有する筆頭株主となる。

またアーンアウトとしてArmの業績に応じて最大50億ドルがソフトバンクグループに支払われる。さらに15億ドル相当のNVIDIAの株式報酬がArmの従業員に付与される。

なお、この取引は米国、英国、中国、EUのそれぞれの規制当局の承認を取得するという厄介な手続きが必要となる。

ここ数か月の間、ソフトバンクはArmの売却先を探しており、7月にはAppleとも協議したとBloombergが報じているが、Appleも以下のような理由によりこの買収は困難で厄介だと判断した模様だ。

  • まず、Armのライセンス料収入というビジネスモデルはAppleのハードウエア・ソフトウエアのビジネスモデルには合わない。
  • そして、もしAppleがArmを買収すると、多くの競合他社に供与する重要なライセンスをAppleが保有するということになり、規制上問題になる可能性がある。

後者の規制上の問題はNVIDIAがArmを買収したとしても解消されない可能性がある。NVIDIAはAMD、Qualcommなど、多くの競合他社にArmのライセンスを供与することになるからだ。

または競合他社にとっては、競争相手の傘下にあるArmの技術を使わなければならないことになり、これも厄介な問題になりうる。半導体業界全体が大きな影響を受けることになる。

そもそも、NVIDIAはそれほど資金力が大きいわけではないので、Armを買収することは困難だろうとの見方もあった。この厄介な問題が上記のようなややこしい取引方法でうまく解決できるのであれば、それはそれですごいことだ。

しかし本件は厄介な問題が多すぎる。