Title: | ブロードバンド整備計画を巡る豪州政府とTelstraの争いについて |
Updated: | 2007/12/12 |
Category: | 制度研究 |
Areas: | オーストラリア |
ブロードバンド整備計画を巡る豪州政府とTelstraの争いについて
2007年6月18日、豪州政府は全国規模の高速ブロードバンド計画である「Australia Connected」を発表した。この計画は2009年6月までに全人口の99%に、伝送速度12Mbpsのブロードバンドアクセス提供を可能にしようとするものであるが、豪州政府はこの発表の中で、全国高速卸売ネットワークの構築事業体としてOpelを選定したことも併せて発表した。Australia Connectedのもう一つの柱は商業ベースによるFTTN(Fiber-to-the-Node)網の建設であるが、公開競争入札で事業体を選定するとしている。
2007年8月3日、TelstraはOpelへの多額の税金投入や事業体決定の過程が不明であること等に抗議し、Helen Coonan通信・情報技術・芸術大臣(以下「Coonan通信大臣」)を連邦裁判所に提訴した。
このTelstraの提訴に対し、Coonan通信大臣も8月6日以降の会見等の中で、2008年1月28日にTelstraがサービス停止を予定しているCDMA網について、「Next Gサービスが現行CDMA網よりも広いカバレッジやサービスを提供できるまではCDMA網の停止を認めない」と繰り返し反論している。
これに対し、2007年9月11日、Telstraはこのlicence conditionを撤回するように、再度、Coonan通信大臣を連邦裁判所に提訴した。
2007年10月15日、Telstraはプレスリリースを行い、「Next G網はCDMA網よりもそのカバレッジは拡大し、伝送速度も速くなった」と発表し、また、2007年10月22日、TelstraはCDMAサービス停止予定時期まで100日を切ったと発表し、その中で、2007年11月13日までにNext G サービスに加入したCDMAのポストペイド加入者に100豪ドル(約10,770円)のクレジットを与えるとしてNext Gサービスへの移行を勧誘している。
2006 年の完全民営化当初は、豪州政府とTelstra の関係も良好であり、また、Coonan 通信大臣もTelstra と競争規制当局ACCC のアクセス開放問題の議論に介入しないとの立場であった。しかしながら、Telstra の提訴に対しても表面は冷静に見えたCoonan 通信大臣も11 月24 日の総選挙を控えてのTelstra の株主への反政府キャンペーンには不快感を示し、Telstra の事業分割の可能性も示唆し始めている。
また、ACCC 委員長もTelstra が仮に FTTN 網建設の受注を逃した場合にはTelstra の事業分離の可能性も出てくるとコメントしている。
11 月24 日の総選挙の結果、労働党が11 年振りに政権を奪回することとなった。全国的なFTTN 網の構築を選挙課題の一つに挙げていた労働党が政権を担当することになったため、これまで、豪州政府が推進してきた全国的なブロードバンド網推進計画に大幅な変更が出てくる可能性も出てきた。