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Title: 中東携帯キャリア(Zain、Etisalat、STC)の海外展開状況について
Updated: 2008/04/14
Category: 市場分析
Areas: アフリカ 中東

中東携帯キャリア(Zain、Etisalat、STC)の海外展開状況について

レバノン政府の電気通信規制機関であるTRA(Telecommunications Regulatory Authority)は2007年5月、国営携帯事業者であるAlfa Telecom及びMTC Touchの民営化計画を発表した。レバノン政府は、2008年5月にもオークションの実施を予定しているが、このレバノンの携帯事業民営化には、Zain(クウェート)、Etisalat(UAE)、Saudi Telecom(以下「STC」)、Qatar Telecom(以下「Q-Tel」)、Orascom Telecom(エジプト)、MTN(南ア)及び France Telecom(以下「FT」)が興味を示していると言われている。
Zain及びEtisalatの両社は、アフリカ携帯市場への進出も顕著であり、南アフリカをベースとするVodacomやMTNとアフリカ新興国の携帯市場で鎬を削っている。また、STCもアジア(マレーシアやインドネシア)に加えて、クウェートやトルコにも進出しているが、Q-Telもアジアに進出している。
Zainグループは中東7ケ国で携帯事業ラインセンスを保有しているが、クウェート、ヨルダン、バーレーン、イラク及びスーダンでは「Zain」のブランドで、ヨルダンでは「MTC Touch」のブランドで事業を展開している。また、アフリカ中部のsub-Saharan countriesと呼ばれる15のアフリカ諸国においては CelTel(CelTel International B.V.)を通じて携帯事業を展開しているが、2007年9月末現在のZainのグループ従業員数は13,500人で、グループ全体の携帯加入者数は約3647万である。
Etisalatは2004年にサウジアラビア第2番目のGSMライセンスを32.5億米ドル(3350億円)で取得し、2005年5月にはアフリカのAtlantique Telecomの株式50%と6ケ国(ベニン、ブルキナファソ、トーゴ、ニジェール、ガボン及び中央アフリカ)のGSM事業を取得している。また、2005年後半にはコートジボアール(旧象牙海岸)でライセンスを取得し、2006年7月にブランド名「MOOV」で携帯市場に参入している。Etisalatの2006年度アニュアルレポートによれば、2006年末のAtlantique Telecomの加入者は130万である。西アフリカ以外のスーダン、エジプト及びタンザニアにも進出しているが、2007年末現在、Etisalatは中東、アフリカ及びアジアの13ケ国で携帯事業を展開している。
ZainやEtisalatと比較すると、STCの海外展開の開始は遅い。2007年7月に、STCはマレーシア携帯最大手のMaxisの親会社であるBinariangと提携し、Maxisの株式25%を30.5億米ドル(3144億円)で取得したが、この契約の中にはMaxisが65%の株式を保有するインドAircelへの投資やSTCによるインドネシアPT Natrindo Telepon Selulerの株式51%の取得も含まれている。
2008年1月21日、STCはOger Telecomの株式35%を25.6億米ドル(2639億円)で取得すると発表した。Oger TelecomはUAEの最重要首長国ドバイをベースとする会社であるが、傘下企業にはトルコの固定通信事業者であるTürk Telekom、同社の携帯子会社Avea、南アフリカ第3位の携帯事業者Cell Cがある。その結果、STCの海外携帯市場展開先は中東のクェート、トルコ、南アフリカとアジアのマレーシア、インドネシア及びインドの6ケ国に拡大している。
FTは3.9億米ドル(402億円)でTelkom Kenyaの株式51%を取得するとともに、ニジェールでも固定・携帯ライセンスを取得した。2007年2Q末時点で携帯電話の加入者数が1000万を超えているアフリカの国は、南アフリカ、ナイジェリア、エジプト、アルジェリア及びモロッコの5ケ国であるが、ケニアはこれらの国に次ぐ有望市場と言われている。ナイジェリアの人口は1億4000万であり、人口の多さからは今後の有望市場とされているが、MTNのデータによれば、ARPUは17米ドル(1752円)である。ナイジェリアの携帯市場にはMTNやZain系のCeltel等、既に11の携帯事業者が参入しているが、アフリカ携帯市場の主導権争いを占う意味では、ナイジェリア及びケニアでの事業展開の成否が鍵となりそうである。
Zain首脳は今後の海外展開先として、アジア及び東欧を挙げているが、今、海外の携帯事業者が特に注目しているのはベトナム市場である。ベトナムの2006年末の携帯普及率は未だ23.9%であり、その低さが注目されている。2008年以降、ベトナムの主要携帯事業者の民営化が予定されており、アジア、中東及び西欧の携帯事業者が興味を抱いているとされる。
今のところ、中東・アフリカをベースにするZainやEtisalatのベトナム市場への具体的な進出の話はないようであるが、Telekom Malaysia(以下「TM」)が携帯事業の再編計画を発表している。計画によれば、完全子会社TM International(以下「TMI」)をベースに持株会社RegionCoを創設し、その下にマレーシア第2位の携帯会社Celcom(TMの完全子会社)及びTMI傘下の海外携帯事業者6社を収めるが、経営に機動性を持たせるためRegionCoはスピンオフされ、TMとは別上場される予定である。TMはRegionCoの戦略的パートナーを探しているとのことである。STCはCelcomのライバルであるMaxisの親会社との戦略的提携を選択したが、ZainやEtisalatがRegionCoの戦略的パートナーとなる可能性も否定できない。

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