Title: | リスキリングが求められる社会背景と企業の対応 ―社内副業制度の導入とその影響― |
Updated: | 2024/03/01 |
Category: | 社会・経済 |
Areas: | 日本 |
リスキリングが求められる社会背景と企業の対応 ―社内副業制度の導入とその影響―
日本の社会課題として労働力不足が存在する。物理的な労働人口の減少もあるが、技術進歩に伴う新しいスキルへの転換が進まないことで、新しい産業分野での労働力が不足する事態となっている。国はこの問題を解決するためリスキリングを進め、生産性向上により余剰となる職種から新たなスキルが必要な職種への転換を促す政策を推進し、そのスキルを活かせる産業へ労働力がシフトすることを期待している。具体的には、個々の人材が主体的に新たなスキルを獲得する「キャリア開発」を行うことを求めている。企業もまた、社内でのスキル転換や、新たなスキルを持った人材を獲得する施策を実施しており、ジョブ型人事制度の導入はその一例である。
しかし、企業にとっては、キャリア開発に成功し、高いスキルをもった人材は転職リスクも高いというジレンマを抱えている。この問題への対策として注目されているのが「社内副業制度」である。この制度は、従業員が自らのスキルを活かす場として活用することも、関心のある業務を啓発的経験とすることもできるものであり、これまで自身のキャリア開発に積極的でなかった従業員にとって利用しやすいものとなっている。この制度により、従業員は転職せずとも新たなキャリア開発のフィールドを社内で見つけることが可能となり、従業員のキャリア自律向上と転職意向抑制の効果も期待できる。
本稿では、個人の主体的なキャリア開発が求められるようになった背景を、政府政策を通して追跡し明らかにする。次に企業がどのような影響を受け、どのような課題を抱えることになったのかについて触れる。最後に、その対応策の一事例として社内副業制度を紹介し、企業が抱える課題と対応について述べる。