研究員がひも解く未来

研究員コラム

環境意識と購買について

SDGsやCOP26など環境に関するニュースが毎日のように報道され、環境への関心が高まってきている。そこで、前回のコラムでは、「環境問題では知識だけの日本人男性」として、SDGsやパリ協定といった環境に関するキーワードの認知度と環境問題への関心について述べた。本コラムでは、その続編として、日常生活の購買において環境への意識がどのように反映されているかについて述べる。

1.環境に関する意識

KDDI総合研究所が実施した調査では、環境に「とても関心がある」人が10.6%、「やや関心がある」人が42.9%おり、合わせて53.5%が環境に関心があると回答している。一方、環境に「まったく関心がない」人は5.6%、「あまり関心がない」人は14.8%と20.4%にとどまっており、環境への関心が高いという結果が出た。

グラフ1:環境への関心度

2.環境への取り組み

こうした環境意識の高まりを受けて、環境に積極的に取り組む企業が増えている。

例えば、アパレル関係では、ユニクロが、「RE.UNIQLO」として、全商品をリサイクル・リユースする取り組みを行っている。具体的には、ユニクロダウンリサイクルとして、着られなくなったユニクロのダウン商品を回収し、ダウンとフェザーを100%リサイクルすることで、生産過程におけるCO2排出量を約20%削減している。

また、GLOBAL WORKやLOWRYS FARMなど若い女性に人気のブランドを展開するアダストリアは、「Cotton2040」に参画し、2025年までにコットンを使用した全ての商品にサステナブルコットンを取り入れていくことを目標にし、対象商品には同社のオリジナルマークを記載している。さらに、グループ会社のADOORLINKは全ての商品にサステナブルな素材や加工方法を取り入れてライフスタイルブランド「O0u(オー・ゼロ・ユー)を展開している。

上記以外にも、多くのアパレル企業が消費者の環境意識の高まりを受けて環境問題に取り組んでいる。

3.服を購入する時に重視する項目

今回実施したアンケートでは、服を購入する時に重視する項目として、「価格」、「デザイン」、「色」、「サイズ感」、「環境に配慮した商品」など16項目を尋ねた。

その結果、アンケートの回答者全体では、服を購入する時、「環境に配慮した商品」であることを重視する人は4.8%で、選択した人が最も多い価格(79.7%)の1/15以下となっている。環境問題に「とても関心がある」人では、「環境に配慮した商品」であることを重視すると回答した人は24.0%と全体の5倍になるものの、デザイン(75.6%)や価格(73.7%)を重視する人の1/3以下となっている。

グラフ2:環境への関心と服の購買において重視する項目

3.まとめ

アンケートでは、環境への関心のあると回答した人は過半数を占めるものの、服を購入する時に、その商品が「環境に配慮した商品」であることを重視する人は、5%未満にとどまる。環境問題に「とても関心がある」と回答した人でも、「環境に配慮した商品」であることを重視する人は4人中1人である。このことから、環境への関心は高まっても、現時点では自らの購買に環境への意識を反映している人は少数派と言える。

企業は、消費者の環境への意識が購買活動に反映されるまで我慢の時が続くことが予想される。例えば、NIKEは、若者に人気のあるゆりやんレトリィバァが環境エキスパートのノイハウス萌菜がサステナブルな生活を送るコツを話す動画を制作している(https://www.youtube.com/watch?v=Bwbz0cEHDAc&t=1s)。 このように、企業の側からも消費者の環境意識を高める活動が期待される。


KDDI総合研究所シニアアナリスト 今村一晃

参考レポート:調査レポートR&A「環境に配慮しただけで、商品は売れるのか」(2021年10月21日)