最上段、「島田範正のIT徒然」の直下に「News Trust」のタグを追加しました。クリックして頂ければ分かりますが、これはソーシャルニュースネットワークの一つであるNewsTrust.netのwidgetで、ジャーナリステック的観点から優れていると評価された「media」分野の記事ベスト10です。対象は過去1か月分で、どんどん自動的に更新されます。ランキングはここに登録した数千人のメンバーの5段階評価によります。(ここではMSM=Main Stream Media=だけにしましたが、Independent Mediaを選ぶこともできます)

さてNews Trust?聞きなれないなあ、ナンボのもんじゃい、という声が聞こえそうですが、実は小生、スタートした2006年11月末の直後から注目していました。「われわれは人気じゃなくてジャーナリステックな質でランク付けする」「質の良いジャーナリズムを発見しみんなと共有する」「群衆の叡智を生かすことで、報道機関(News media)と市民の間で失われている信頼(Trust)を再建したい」となんとも肩に力の入った宣言が気に入ったのです。アドバイザリーボードには「思考のための道具」や「スマートモブス」で知られるハワード・ラインゴールド、元祖アルファブロガーとも言うべきダン・ギルモアクレイグスリストで大成功したクレイグ・ニューマークスのほか、なんとグーグルのエンジニアリングマネージャーのマイク・ディクソンなど錚々たる顔ぶれにも惹かれました。実際にメンバーになったのがその年の12月だとサイトの記録に残ってます。

この「質」のこだわって記事にランク付けするNews Trustのやり方は、2004年12月にスタートした「digg」やその日本版とも言うべき「newsing」(2006年7月スタート)といった有力ソーシャルニュースとは大きく異なります。

diggやnewsingのやり方はひとことで言えば、登録したメンバーが面白いと思った記事をサイトに投稿し、それを見た人(だれでも可)が面白いと判断すればそれに対応するボタンをクリックし、その数字の多い順に並べて表示するのが基本です。

2004年から翌年にかけて時代の寵児のような存在だったホリエモンこと堀江貴文・元ライブドア社長がオウム事件で有名になった江川紹子さんとの対談した際のメディアありように関する発言がマスメディアからの反発を招きましたね。ちょっと長いですが江川さんのブログからコピペ。2005年2月のことです。

私自身が紙媒体に親しんでいるところもあって、話は主に新聞を題材にして進んだ。
ライブドアは、「市民記者」を募集し、自らのサイトのニュー スに自前の記事を載せ始めている。その規模を拡大し、既存メディアの情報も取り込みつつ、ニュースサイトを充実させていくつもりだという。そして、新聞を 発行し、そこでアクセス数が多い記事を紙面に載せていく。人気のある記事は大きく扱い、そうでないものは載らない。その扱いは、もっぱらサイトの読者の人 気ランキングにより、新聞社の価値判断は一切入れない。
「人気がなければ消えていく、人気が上がれば大きく扱われる。完全に市場原理。我々は、操作をせずに、読み手と書き手をマッチングさせるだけ」
そうなれば、確かに新聞社の意図的な情報操作はできなくなる。その一方で、埋もれていた記事の発掘、少数者の声などは表に出てこない。が、堀江氏は
「いいじゃないですか、それで。そういうもんじゃないですか、情報って」「読者の関心が低いゴミみたいな記事を無理矢理載せたってしょうがない」と頓着しない。
ただ彼は、そのメディアで流される報道の内容には興味はない。メディアを持ちたいのも、金融など本来のビジネスに必要だ、という考えから出発している。
「報道の使命」など、報道に携わるものの”志”に関しても、それが「思い上がり」「自意識過剰」につながると、バッサリ切り捨てる。
ユーザーの関心度だけが、掲載の基準となる。彼が作ろうとしているのは、そういうメディアだ。

ちょっと極端かもしれないけれど、diggやnewsingはこのホリエモン路線ですよね。結果、悪貨が良貨を駆逐する。newsingを作った上原仁さんが1年前に自身のブログで「newsingに低俗なニュースが多い件」と題し<おれは低俗なニュース好きじゃないんだよね。特にあったかなかったかもわからないような芸能ニュースもどきでアフィとかランキングとかに誘導するようなのはマジ気分わるい。このまま低俗なネタしか集まらないサイトになるんだったら一旦閉じようか>と嘆いてましたね。人気だけでやればそうなる。それは避けられない。多分。

で、後発のNews Trustの取った評価手段はとんでもなく手間がかかる内容でした。「良い」とか「面白い」とかいう次元とは地球から月とアンドロメダへ行くほど違います。スコアシートはこれです。

なんと12項目について5段階評価をし、コメント記入を求められます。しかも採点するメンバーは事前にかなり詳しいプロファイルを記入することが求められています。このプロファイルにある経歴や自分のページを持っているかどうか、その更新具合はどうかに加え、実際にどのくらいこのスコアカードを出したかも加味してメンバーの「質」も勘案した上で、総合点になるという仕掛けです。ただし、この12項目採点はあまりに負担が大きいので当初から6項目のスコアカードがあり、最近ではエイヤッと1項目だけで済むのも用意されています。もしご興味があればどうぞ。でも、メンバーにならなくても、厳選された英語ニュースを読むにはなかなか便利だと思いますよ。カテゴリーは通常のニュースサイトと同じようになっていて、さらに細かなトピックス分類もありますので。もちろんRSSフィードも用意されてます。

あ、そうそう、こういう試みってPEJ(The Project for Excellence in Journalism)の試み同様、日本じゃあ考えられないですね。News TrustのFAQを読むと「いずれ英語以外も加えたい」ってあるけど・・・・・・良貨は悪貨を駆逐しないんですよね・・・・・

それとね、境さんのいうweb1.5の範疇にこれが入るのか、って思いでいます。

もひとつ言えば、リアルタイムで携帯アンケートの立体的なやりようになにかヒントがありそうだなあ。