一月ばかりネット環境のないところで休養していまして、更新が滞ってしまいました。もう寒くなってきました。さて、表題のオンライン新聞はRocky Mountain Independent(RMI)のことです。ちょっと寒いと言うか残念な話です。

今年2月末に廃刊となったアメリカ・コロラド州デンバーの名門紙Rocky Mountain News(RMN)の記者約30人が、RMNの精神を受け継ごうとINDenver Newsの名称で月5ドルを課金する構想のオンライン新聞に取り組んだのがことの始まり。しかし出資予定者が要求した有料購読者5万人のハードルは高く、3千人しか集まりませんでした。これでは本格的なローカルニュース・解説サイトは運営できないとして、7月に、有志14人がそこを飛び出し、各自が自ら出資する背水の陣で始めたのがRMIだったのです。

収入源は広告と有料会員制を取り、料金は月4ドルまたは年間24ドルでした。しかし、会員制のメリットがほとんどないため伸び悩み、会員は200人にとどまったという報道もあるほど。もちろん、広告も不況で思うように増えず、さらにスタッフも4,5人に減ってまともに独自記事を生み出せなくなるといった苦戦の末、「実験は終わった」という悲しいお知らせを10月5日、サイトに掲載することになったわけです。

RMI終了

編集長だったSteve Fosterは地元のブログ新聞Westwordに対し「Huffington Postなどのように十分な資金を持って大規模にやるなら別だがローカル専門はビジネス的に難しい」という趣旨の敗戦の弁を語っています。ニュースサイトはタダが常識化した中で、不況が重なれば独自取材専門のニュースサイトの運営が困難なことはそのとおりでしょう。

そこで、今、米国で注目を集めているのが非営利のオンラインニュース機関です。7月15日のエントリーで紹介した元RMNの女性記者ローラ・フランク記者も寄稿した「Pro Publica」はその代表例で、2年前にニューヨークを本拠にスタートしましたが、その財源は3千万ドルの拠出を約束したサンフランシスコ在住の富豪の資金が中心です。年間予算は9百万ドルで32人の専属記者が調査報道に携わり、今やその実力は非営利報道機関の双璧PBS(Public Broadcasting Service)NPR(National Public Radio)に次ぐと評されているそうで、富豪以外からも財団や個人からも資金を潤沢に集めています。NHKの番組ではローラ記者が新聞ではなくネットの報道機関頼みになることに不安を訴えていましたが、驚くなかれ、元ウォールストリートジャーナルの編集局長だったSteiger編集主幹の年棒は、なんと57万ドルだということで、いかに力をつけているかがしのばれます。(日本の大新聞社の社長クラスより高いかも)

11月3日からはテキサス州ヒューストンをベースにTexas Tribuneが「非営利」「無党派」を掲げて、スタッフ15人程度、初年度予算160万ドルでスタートします。すでに350万ドルを富豪や財団から集めていて、さらにネットで個人メンバーは50ドルから、投資メンバーは5千ドルからの寄付を求めてもいて、少なくとも向こう3年の資金はすでに確保している計算だそうです。サイトにあるスタッフ紹介によると殆どが新聞社やテレビ局を辞めて集まってきたようで、CEO兼編集主幹自身、雑誌社の社長を辞めての参加です。

またサンフランシスコでは、来年早々のスタートを目論むBay Area News Projectが動きだしました。これも投資会社の経営者が500万ドルを出し、ニューススタッフ28人を擁する地元ラジオ局と120人の学部生がいるというUCバークレー校ジャーナリズム学部との共同で質の高いローカルニュースを発掘していくそうです。

他にも例がありますが、共通するのは、新聞不況でどの都市でも地元紙が2紙あったものが1紙に減ったり、さらに経費節減で記者のレイオフが当たり前になり、調査報道がなくなったり、ローカルニュースの質が落ちているという現状への対応と言えるでしょう。RMIの試みもそうでした。いかんせん資金不足で挫折しましたが、富豪が先頭に立って報道を充実させるという動きは、「寄付文化」が根付いた米国らしい展開とも言え、どこまで雪だるまが転がるか楽しみなことです。