前回記事「ドローン・ジャーナリズムの時代が到来」では、超小型無人ヘリ・ドローンによって上空から撮影されたウクライナ・キエフの映像に圧倒され、思わず、ジャーナリズムの可能性を広げることばかりに目が行ってしまいました。

しかし、前回記事の後半で触れたように、個人のプライバシーや軍事機密などに抵触する可能性も同時にあるわけで、問題化する要素も多いのは間違いありません。

この点、日本では全く議論が進んでいませんが、ドローン先進国アメリカでは、日本ではちょっと想像できないほど規制議論が進んでいて、なんと全米50州のうち42州の議会で規制法案が提出されているそうです。

このことは、全米最大の人権擁護団体ACLU(American Civil Liberties Union:アメリカ自由人権協会)が、随時アップデートしている特集ページ(最新アップデートは12月17日)で知ったのですが、それによると、すでに8州で議会が可決、知事もサインして成立し、うち6州で発効しているとのことです。

この動きは、今年初めから加速していたようですが、その背景には全国ネットワークを持つACLUの、各州での議会への働きかけがあったためのようです。そのACLUのストラテジストが書いた分析記事によると、各州ごとに法律(案)の内容は若干異なりますが、基本的には、捜査当局(law enforcement)が、ドローンを犯罪捜査に使う際の歯止めを定めていることが多いようです。

具体的には、例えば警察が「アヤシイ人物だから」という恣意的な判断だけで、その行動を監視するためにドローンをを飛ばして情報を得る−−というようなことは認めず、「probable cause warrant」(相当な理由に基づく令状)を裁判所から貰ってから飛ばす、ということのようです。

そのほか、先のストラテジストが今年3月段階で書いたまとめ記事によると、「武装してはいけない」「農場や牧場を上から監視してはいけない」「議会の求めに応じて捜査当局はドローン使用状態を開示する」「ドローン購入にあたっては自治体に必要性を報告し了解を得る」などを個別に盛り込んだ法律(案)もあると書いています。

こうした「ドローン捜査」への規制ムードが全米的に高まる中、西海岸ワシントン州最大の都市、シアトル市では今年2月、住民やプライバシー団体の抗議を受けて、市長と市警本部長が予定していた「drone program」実施断念で合意すでに購入済みのドローン2機を製造元に返却するという”事件”も起きています。

こうした流れの基調にあるのはなにか。Slateに掲載された記事でACLUの弁護士は<the wholesale surveillance of American life is becoming cheap and easy, legal protections are all the more important.>と記しています。(当局による)監視はどんどん安くて簡単になるので、(個人を)法的に保護することがより一層重要になるのだ、と。

このように、殆どの法律(案)は、当局の行き過ぎを抑えることに主眼が置かれているようですが、個人使用についての規制についても言及しているのがいくつかあるようです。

例えば、アイダホ州の場合は「ドローンを使って、個人が利益を得る可能性のある映像を撮影することを禁止」としているそうですし、テキサス州でも詳細は分かりませんが個人使用についての多くの規制があるそうです。また、オレゴン州では、個人宅の上空400フィート以下での飛行を禁止しているとか。

思えば、グーグルアースが登場した時には、「軍の基地の様子があからさまになる」という反発、グーグルのストリートビューが出た時は、プライバシー侵害につながる、という批判が出ました。しかし、このふたつに比べると、ドローンのパワーは、「安くて誰でもどこでも使える」という点で比較になりません。

当のグーグルのエリック・シュミット会長自身が「テロリストの手に落ちる前に、ドローンの個人使用は国際条約で禁止すべきだ」と英紙ガーディアンに語っているのも、グーグルアースやストリートビューとは質的に違う強力なものだということを強く認識しているからでしょう。

日本でも議論を始めねば。でないと、ジャーナリズムが適正に利用する道も閉ざされてしまいかねません。