米カリフォルニア州ロサンゼルスの北にあるBakersfieldという町で発行されているBakersfield Californianという新聞から、しばしばメールが届きます。今日も来て、3月だけでこれが10通目。

中味は、同紙のサイトへのモバイルアクセスの勧めだったり、割引料金での宅配の勧誘だったり。なんで、日本にいる私にそうするようになったかはワケがありますが、それは別の機会にするとして、メールに誘われて何の気なしに同紙のサイトを覗いていたら発見がありました。

Subscriber Service FAQのページにあった<Vacation Donation>というフレーズです。「休暇の寄付」とは一体何でしょう?よく読むと、自分の休暇の日数を削って誰か他の人にプレゼント?ってことではありませでした。

このFAQの項目でGoing on Vacationの項目へ飛ぶと「vacationの間、取り置きするサービスがあります」とあります。これって、日本で我々が新聞販売店にお願いするのと同じ。

しかし、その後に、「Californian in Education (CIE)プログラムに休暇中の新聞を寄付することも出来ます」とも書いてあります。しかも、こっちを選べばその間の料金は頂きませんとも。これがVacation Donationです。

そして次の項目はそのプログラムの説明で、同紙が20年前に始め、地元の学校に新聞を無料または格安で提供する事業だということです。これで、児童生徒の読み書き能力強化だけでなく、毎日の生活に関わる全ての科目に目を開かせることになる、などとしています。そのための特別のカリキュラムのようなものを準備しているようです。

CIEプログラムは、日本で幅広く行われているNIE(Newspaper in Education=教育に新聞を)と同じものと言えるでしょう。で、米国ではNIEと言わないかといえばそうではなくて、全米的にはNIEを掲げる新聞社が多いようです。そして、Vacation Donationというフレーズは共通です。

例えばNewYorkTimesの場合は、Vacation suspensionsのページで期間を入力すると、その期間分のクレジットを受け取るか、The Times to schoolsにそのクレジットを寄付するかを選べるとあります。

ペンシルベニア州のReadingという町で発行されているReading Eagleという新聞のサイトに設けたNIEのページにははかなり詳しく同紙のNIE Vacation Donation Programについて説明しています。その中にもVacation Donationの項目があって、「休暇中、あなたが止めた新聞のお金は新聞をクラスに持ち込むために使われる。このプログラムで昨年は23万部になった」と書いています。

同じく東部のニューハンプシャー州マンチェスターのUnion Leader紙にもNIEのページがあり、ここでもVacation Donationについて説明し、「休暇中、単に配達を止めるんじゃなくて寄付してくれれば、学校向け料金は半額なので、あなたの休暇中の1部が2人の生徒に渡る」と呼びかけています。

このように、米国では大新聞から中小新聞まで、NIE向けのVacation Donationというシステムはどうやら当たり前のようです。

翻って日本。どの新聞社もNIE活動に取り組んでいますが、某大手紙のNIE担当に聞いたところ、日本でVacation Donationのシステムを取り入れている新聞社は聞いたことがないそうです。

これはおそらく、米国では新聞社が配達まで直接、管理していて、宅配ストップも読者から直接受けるからこそ容易に出来ることなのに対し、日本では新聞販売店に配達を委託しているシステムなので、採用するとすると、手続きが複雑になるからかもしれません。

また、日本では、学校からの要請で送付するNIE特集の記事コピーや出前授業の際に持ち込む新聞の現物などは、新聞社が自腹を切って全て無料で提供していて、海外の新聞関係者からは「よく自前でやってるねえ」と驚かれるとか。

それが出来ているのは、まだ日本の新聞には余力があるということで、それはそれで喜ばしいことではありますが、米国流に、読者にNIEへの参加意識を持たせるこのVacation Donationという仕組は、購読紙に愛着を持たせ、敬意を払わせるような良い手段かも知れません。

ちなみに、経営不振からアマゾンのベゾス氏に買われたWashingtonPost紙のサイト内のHelp Deskには、休暇中は「電話やサイトで宅配はストップ出来るが、払い戻しや延長はない」とだけあって、Vacation Donationへの言及はありません。買収される以前はどうだったかは分かりませんが。