インターネット関連でいつも興味深い調査結果を提供してくれる米国のPew Research Centerが先週、新たなレポートを公表しました。Internet Seen as Positive Influence on Education but Negative on Morality in Emerging and Developing Nationsという長い題がついています。

32カ国に及ぶ新興・途上国で、インターネットとの関わりや意識を探ったものですが、Pew では、題名にあるように「ネットは教育には良い影響を及ぼすが、モラル面では芳しくない」という意識に注目したようです。

しかし、どう教育に良いのか、どうモラル面に良くないかの具体的な話はなく、物足りません。それより、当方の知識不足かも知れませんが、興味を惹かれたのは、新興・途上国の携帯電話普及率が平均で86%に達していることでした。5割以下なのはパキスタン一国だけです。

もう一つ、当方にとってのビックリは、米国では「固定電話のない世帯」が昨年上半期の段階で44%もあったことでした。

調査対象国の多くはサハラ以南のアフリカ諸国や東南・南アジアの国々ですが、ロシア、チリ、アルゼンチンなども含まれていて、どういう基準で選んだかは分かりません。各国1,000人規模(中国のみ3,000人)の面接調査した大掛かりなものです。

まずは、ネットは教育には良いがモラル面では悪影響という結果はこれです。

3分の2近くが、「教育にはいい影響」とし、4割以上が「モラルには悪影響」と回答したようです。ただし、具体的な踏み込みはなし。

また、インターネットへの接続率についての結果はこれです。調査対象32カ国も一覧できます。米国は32カ国に入っていませんが、参考のために別調査の数字が各所で引用されています。

「ネット接続している」と回答した人が10~20%しかいない国もいくつか存在しますが、平均では44%となりました。新興・途上国限定なのですから、かなりの接続率ではないでしょうか。また、インターネットを駆使するIS(イスラム国)などの過激派が跋扈する中東がおしなべて高いのも印象的です。接続している人は、「若くて、学歴が高くて、英語力がある人の率が高い」という、まあ、当然といえば当然なことも確認されているようです。

しかし、これらの新興・途上国では地上回線というインフラが十分には整っていないはずです。

http://www.kddi-ri.jp/blog/srf/wp-admin/post.php?post=5343&action=edit&message=10

自宅に地上回線が来ていないと回答した人は81%にものぼりました。12カ国では、地上回線がある人は1ケタ止まりです。先の世界地図で示したアクセス経験の数値との乖離はどういうことでしょうか。

レポートでは触れられていませんが、その一部は、職場やネットカフェなどからのアクセスが相当程度含まれるのでしょう。そして、もう一つが携帯電話、とりわけスマートフォンからのネットアクセスでしょう、その携帯保有率はこうです。

5割以下にとどまったのはパキスタンのみ。31位のウガンダの65%を含めると全ての国で3分の2以上が携帯を保有していて、平均で86%。そのうち、棒グラフ中、濃い緑で表示されているスマホは24%を占めています。チリや中国は60%近い。ちなみに、日本でスマホ占有率が5割を超えたのは昨年末のようですが。

つまり新興・途上国では、整備に膨大な費用と時間がかかる地上電話網をスキップして無線電話網の時代になっているということでしょう。当然、自宅に固定電話なぞない人が多い。ところが、この「自宅に固定電話なし」の状態が、地上回線が潤沢なはずの米国で急速に進行しているのが驚きです。

これはPewの今回のレポートを伝えるリリースがリンクしていた別の記事で知ったのですが、その記事の元になった米国疾病予防管理センター(CDC)が毎年2回行っているNational Health Interview Survey(国民健康聞き取り調査)の一部を切り出し、電話だけに絞った報告では、昨年2014年上半期で、自宅に固定電話がなく、携帯だけと答えた世帯は、2013年下半期から3%増えて44%に達したそうです。

この2014年上半期調査は、全国22,438世帯で行われたそうで、なぜ、電話のことを聞くかといえば、後で連絡する必要が生じるかも知れない、という口実で前々から行われている由。

で、この報告では2011年からの数字がネット上で読めますが、それによると同年上半期の数字は、「固定電話と携帯電話の両方あり」が55.0%、「固定のみ」が11.2%、つまり計66.2%の世帯に固定電話があり、「携帯のみ」は31.6%でした。

それが3年経った2014年上半期では「両方」が44.7%、「固定のみ」が8.5%で、3年間で固定電話のある世帯は計10.2%減って53.2%まで減りました。そして携帯のみは12.4%増の44.0%へ、というわけです。つまり年平均4%強、携帯のみの世帯が増えています。

44%が1年前の数字ですから、このペースで行けば、来年の上半期には「固定電話なし世帯」が5割に達することは十分に予想されるのではないでしょうか。

それがどうした、と言われれば困りますが、古い世代の人間としては、ニュースがウェブで見られる時代になっても紙の新聞があったほうがいいと感じるように、安定感のありそうな固定電話も手放したくないような気分なので・・・・

なお、日本でも通常のNTT固定電話は大きく減っていますが、IP電話などを含めれば、「固定電話」の減少は穏やかなものです。この日米の違いはなんだろう。