スマートフォンを手にしてから初めてのことですが、36分間、小さな画面に釘付けになりました。小泉元首相ではありませんが、その内容に「感動した」。そして衝撃を受けました。モバイルがテレビを超えるかも知れない、という思いに至って。

観たのは「Agafia’s Taiga Life」というドキュメンタリーです。シベリアの永久凍土の上にある針葉樹林タイガに70年年前に生まれ、家族が亡くなったり去ったりしてからの25年間は、厳しい自然の中、一人で暮らしているという女性Agafiaさんを雪に埋もれる冬に訪問した記録でした。見応えがありました。

それを制作したのは、テレビ局でも制作プロダクションでもなく、ウェブビデオの新興企業Vice Mediaでした。そして、それはテレビで流したものの2次利用でもなく、サイトに載ったものの流用でもありませんでした。モバイル専用コンテンツとして作られたようなのです。テレビに負けない作品をモバイル専用に流してもペイする仕組みが出来ているのですね。

それを視聴出来るのはSnapchatというアプリを通してです。Snapchatは、米国の若者の殆どが利用し1億人のユーザーがいるというコミュニケーションアプリで、起動して写真や動画を撮り、書き込みなどして友人に簡単に送れるのですが、その最大の特徴は、写真や動画が、受信者が見終わったあと、最長でも10秒以内に消えてしまうことです。

昔々のテレビ映画「スパイ大作戦」で「なおこのテープは自動的に消滅する」というセリフが有名でしたが、音声が写真、動画にまで広がったんですね。(つい先日までSnapchatのトップ画面には「NO Nude」って大書してありましたから、下司のかんぐりじゃなくて、その手の利用も多かったのでしょうw)

私も1年ほど前にダウンロードしてみたのですが、日本ではまだあまり話題になっておらず、ましてや私の年代の友人で使う人は皆無ですから放置したままでした。なにしろ、ユーザーの年齢構成がこうですから。35歳以下が71%を占め、65歳以上(私です)は1%しかいない!

 

で、放置状態だったわけですが、今年1月末からDiscoverというニュース配信の新サービスが始まったので、試しに使い出したわけです。

Discoverのトップページのイメージはこれです。

二段目真ん中のSnapchatのロゴ以外の11のロゴが各メディアのチャンネルです。(なぜか、日本では上段中央のComedy CentralがMTVに、二段目右のESPNがb/r Sportsに、さらに最下段右のWarner MusicがFusionに入れ変わってるのがフシギ)

で、各チャンネルのロゴをタップすると各メディアのコンテンツの見出し画面が一つづつ現れます。それを右から左に払う(snap)と次々、別の見出しが出てきます。そこで、面白そうなのがあれば、画面の一番下にある山型のマークをタップすると本体のビデオや記事全文が表示される仕組みです。

見出しと言っても、新聞の見出しのように文字だけでなく、カラフルな画像に効果音が付いたり、10秒程度の予告編のようなビデオが流れたりしてそそられます。それが、チャンネルによって異なりますが概ね10本以下、24時間で全て入れ替わるようです。普通のニュースキュレーションアプリの画面構成とは次元が違う感じです。

こういう斬新な展開はメディアの注目を集めているようで、しばしばSnapchatのDiscoverに関する記事を見かけるようになりました。先週末のブルームバーグの記事もその一つですが、関係者によると、個々のビデオや記事のアクセス数は平均100万件に達するそうです。

となれば、広告主もその集客力に注目するわけで、ブルームバーグの記事では1,000ビューあたり100ドルが広告主に課金されるそうで、これはYouTubeやHuluの倍の料金だそうです。

また、その広告収入の分配は、re/codeの記事によれば、チャンネル自身が集めた広告なら30%をSnapchatに渡し、Snapchatが集めた広告なら5分5分にしてるそうです。仮に1本で100万ビューあるとすると、10万ドルの収入になるわけで、5分5分でも5万ドル平均。それが毎日7,8本あるとすると・・・・物凄いことに・・・・

そのために、各チャンネルは専用スタッフを置いて、テレビ放映したものやサイトに載せたものの転用でなく、少なくとも再編集したり、冒頭に挙げたシベリアもののようなオリジナル作品が作れるわけですね。

なんでも、Snapchatは一昨年、Facebookから30億ドル(3,600億円)の買収提案を蹴ったことで「馬鹿か」と言われたそうですが、今年3月には、AlibabaがSnapchatの資産価値を150億ドル(1兆8千億円)と見積もって投資したと話題になりました。CEOの Evan Spiegelは正しかったわけです。

Alibabaは中国のEコマース最大手。時価総額2,000億ドルを超えます。その巨大企業とSnapchatとの組み合わせから何かが生じるのでしょうか。なんだか新聞だけじゃなく、テレビも大変な時代に入りつつあるのかもしれません。