イギリスで、ネット発の才能溢れるシンデレラボーイが誕生しそうです。その名はNick Jablonka君、18歳。イングランド南部のBornemouth大学の学生です。

その彼が1年前、17歳の時に制作したショートビデオを先週末にYouTubeに投稿したところ、大人気になり、8日現在で70万回以上も視聴されています。回数だけでなく、その質の高さが話題になり、なんと、7日夕方に大手PR会社W communicationsから、ツイッターでこんなラブメッセージが出たのです。


「君の広告ビデオにとても魅了された。我が社での役割について話し合いたし。連絡を乞う」

何が広告のプロを引きつけたのか。それは、毎年この時期に、大手デパートチェーン、ジョン・ルイス(John Lewis)のクリスマスキャンペーン用のテレビCMが話題になるのですが、彼のジョン・ルイスをテーマにした習作が本物と間違えられ、GuadianExpressなどが、「みんなが騙された」などと見出しに取るほどの出来栄えだったからでした。まずはご覧ください。バックに流れる「Follow You Follow Me」の歌詞とも、とてもマッチしています。


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ジョン・ルイスのクリスマス広告の人気については、2年前にこのブログでも取り上げました。毎年、心温まるストーリーが人気の秘密です。昨年の、<The Man On The Moon>は、2,500万回以上も見られています。


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なんでも、英国ではクリスマス商戦で、年間の利益の4分の1を稼ぎ出すそうですから、全国に40ほどの店舗を持つジョン・ルイスもテレビCMに賭けているようで、2分ほどのCM1本の制作に12か月近くと100万ポンド(1億3千万円)をかけ、テレビ放映枠の購入と合わせて700万ポンドに達するとのこと。

例年、この時期に、時間と金をかけたテレビCMがリリースされるのですが、今年はやや遅れて10日にテレビオンエアの予定で、すぐにYouTubeにもアップされる見通しです。たまたま、それに先駆けてNick君がアップした作品が、多くの人に「ジョン・ルイスの新作CM」と勘違いされ、話題になったのです。

なぜ、彼がこの時期に1年前に作ったというショートビデオをアップしたのか。その点について、英国の各新聞や、7日朝、ITVのGood Morning Britainというモーニングショーに出演して語ったことを総合すると、こういうことのようです。

彼は大学とは別にA levelという資格の取れるコースをAQAという教育施設で学んでいましたが、そこで、授業の課題の小論文に、もともとジョン・ルイスの広告が好きだったこともあって「いかにジョン・ルイスのマーケティングがうまくいったか」について書き、メディア担当の教師から言われたこともあって、それにリンクするジョン・ルイス風の作品を自作することになったということです。

それから1年、彼自身は出来栄えに不満足だったので作品を放置していましたが、「アップしても失うものは何もない」と思い定めてアップしたとのことです。

費やした時間は2週間、コストは「スナック数袋とドリンク数本」だとテレビ出演で冗談を言ったことをExpressが報じていました。時間とお金をたっぷりかけたプロの作品と遜色がない、という評判が立って、急速にアクセスが増え、多くの視聴者から「素晴らしい才能」「彼を雇え!」という声が上がっていました。

そして、ついにW communicationsから熱烈なオファーがあり、今週末にも話し合いを持つことになったのですが、タダで宣伝してもらった形になってホクホクのはずのジョン・ルイスからのオファーはまだのよう。ただし、スポークスマンの「なんてすごい作品なんだ。Nickは間違いなく才能に溢れている。我々の作品の制作現場に招待して、一緒に過ごせたら嬉しいな」という、ラブコールとも取れる発言をEvening Standardが伝えています。

なお、この作品、AQAでの成績評価は、もちろん「満点だった」そうです。10日にオンエアされる本家本元との見比べが楽しみです。もちろん、こっちも満点だろうけれど。

(以下、追記)John Lewisの本物のクリスマス広告が予定通り10日にオンエアされ、YouTubeにもアップされました。なかなかの出来栄えです。アップ後14時間で視聴回数は315万回という凄さです。なお、”偽物”の方も100万回を超えました。


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