ロシアからの圧力に抗して、EUとの関係強化を求めて立ち上がった2013年末のウクライナ・キエフの市民デモ。その時の圧倒的な空撮映像が強く印象に残っています。(YouTubeへのリンクはこちら)
それが小型無人機ドローン(Drone)の可能性に気づいた最初でした。以来、このブログでも10回以上も取り上げていますが、それ以前から期待されていた空撮以外の用途、とりわけ、このキエフデモと同時期にAmazonが公表したAmazon Prime Airに示されたようなドローンによる配送サービスの方は、3年以上経った今も実現していません。
ところが、USATodayによると、それは意外なところで”実用化”されていました。なんと、刑務所の塀の中にいる囚人向けに携帯電話やドラッグ、ポルノなどの禁制品が違法に運び込まれているのだそうです。
これはUSATodayが情報公開法に基づいて司法省から入手した政府文書で判明したもので、過去5年間で、明らかになったものだけで1ダース以上もの事件が起きたとのことです。
記事によると、2015年3月に、高度なセキュリティが施されているカリフォルニア州の連邦刑務所で、携帯電話2台がドローンで届けられていました。発覚したのは5ヵ月後だったそうです。同種の事件は他にも何件か起きていました。
また、同年8月には、メリーランド州の矯正施設では、収監者の依頼を受けた二人組がドローンで合成マリファナ、タバコ、DVDのポルノを送り込んだことで逮捕されています。二人組は高額な報酬を受けていたことも分かっています。
ドローンの性能はどんどん向上して、重いものも容易に運べるようになってきたので、司法関係者は、「これまでは、こっそり運び込むことは絶対に不可能だった殺傷力の高い銃器なども運び込まれる危険性がある」として対抗措置の検討を始めたそうです。
怪しい、危険なドローン対策としては、いろんな方法が考えられていて、鷹を使うとか、ドローンと操作しているパイロットとを結ぶ電波を撹乱する妨害電波を発射する”バズーカ砲”などを、以前に紹介しましたが、英国の刑務所では、1月前に、世界初というシステムにスイッチが入りました。
Telegraphが伝えたもので、設置されたのは、イギリス海峡南部、フランス寄りのガーンジー(Guernsey)島にあるLes Nicolles刑務所です。施設全体をドローンの侵入を防ぐ”アンチドローンシールド”で覆うシステムです。
記事によると、侵入しそうになるドローンを操作している電波を検出し、その制御装置を混乱させる機器を周辺と内部に20台設置してあるそうです。これがカバーできるのは高さ600mに及び、これに検出、妨害されたドローンは、離陸地点に戻るので、看守らが”犯人”を見つけやすくなるとのこと。
<Sky Fence>というこのシステムは英国のDrone Defence社とEclipse Digital Solution社が共同で製作したとのことで、そのお値段は、刑務所の規模にもよりますが、10万ポンドから25万ポンドだそう。この刑務所は受刑者が100人未満と小規模のようですから、1500万円ほどで出来たのかもしれません。
ピザなどの配達実験は世界各地で行われていますが、まだ、ビジネスとしては定着していません。その一方で、安全保障上の観点から、トランプ政権は、脅威とみなしたドローンは撃墜できるという新法を準備しているとか。
首相官邸の屋上にドローンが落下しているのが見つかったのは2015年4月。それからもう2年以上経ちますが、安全確保や規制についての動きを、最近さっぱり耳にしませんが・・・・大丈夫か、日本(そして刑務所)!
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