ここ10日ばかり、米国のTech系サイトは、あのElon Musk氏の電気自動車(EV)Tesla Model 3の話題で溢れていました。
値段が現行タイプの半値以下の3万5千ドルからとガソリン車に近づいたこともあって、人気は上々、予約は50万台を超えたそう。先月28日のイベントに集まって試乗した記者たちの多くは、この新車を絶賛しました。
例えば、Axiosは「長い目で見れば10年前にiPhoneが登場したことより重要なことだ」と記し、Futurismは「競争相手はいないということで評論家の意見は一致した」と見出しに取りました。
その絶賛の嵐の中で、Musk氏はこう言い放ったということです。「米国で製造される新車の半分は10年以内に電気自動車になるだろう」と。
しかし、これに異議を唱える記事もありました。MIT Technology ReviewのJames Temple記者によるものです。おおよそこんな主張です。
まず第一に、10年後の新車の半分といえば910万台になるが、それに載せるバッテリーの製造能力は到底追いつかないはずだ、ということ。
二つ目が、走行距離が短く、かつ割高で充電に時間がかかる自動車を一般消費者のどれだけが好むか疑問だし、マンション暮らしの人は自宅充電が難しいこともある。
三つ目が、充電スタンドをいっぱい作ることは環境問題に逆行しないかということ。加えて、自宅で夜間充電することは、太陽光エネルギーでなく石炭火力発電を使うことになるので、環境問題に逆行するのではないか、とも。
また、Bloomberg New Energy Finance が6月に公表した、リチウム電池の価格が下落してEVがガソリン車(ICE)と価格面で拮抗するのは2025年頃という推計にも言及し、Musk氏の言うように10年以内にEVが新車の半分になるという見方に否定的な根拠の一つにしています。
こうしたTesla関連の記事を色々眺めていて、日本メーカーのEVの取り組みにちょっと不安になったところで、たまたま1週間ほど前にロイターが流した記事に出会いました。この記事は、中日新聞が先月25日に一面で報じたものを転電したものと断っています。
その中日の記事は、「トヨタ自動車は、現状の電池よりも飛躍的に性能を高めた次世代の『全固体電池』を搭載した電気自動車(EV)を二〇二二年にも日本国内で発売する方針を固めた」という書き出しで始まっていますが、記事のキモは、現在の主流のリチウムイオン電池に代わる「全固体電池」が、航続距離を伸ばすだけでなく、現在は最低でも2,3o分はかかるという充電時間を2,3分と10分の1に出来るということです。
充電が2,3分で済むなら、充電スタンドは不要でしょうね。コンビニの店先や郵便局などの入り口近くに有料プラグを置けば済みそうです。これはとても画期的な進歩に繋がると私は受け取ったのですが、他の新聞やテレビ報道で見かけた記憶がありません。
そこで、日経テレコンで確認しましたが、この中日報道を受けて、すぐに追いかけ記事を書いた新聞はありませんでした。
なので、「もしかして、中日の飛ばし記事か?」かと一瞬思いましたが、トヨタが東京工大と全固体電池の開発に取り組んでいることは以前に報じられていますし、ロイターの取材に対し、トヨタ広報の土井賀代さんは「特定の製品についてはコメントしない」としながらも「2020年代初頭には全固体電池の商用化を目指している」と付け加えたそうですから、「飛ばし記事」ではないようです。
もし、この記事が正確なら、Musk氏の見通しに異議を唱えたTemple記者が示した課題のいくつかは解決します。
では、なぜ、他紙が追いかねないのでしょうか?
最近は自動車の全面広告などはとんと見かけませんが、それでも、EVの未来を煽れば、ガソリン車の買い控えに繋がりかねないというような忖度をしてる? まさかね。とまれ、日本メーカーがTeslaと対抗できる日を待ちましょう。ライバルは多いですが。
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