年末年始の休暇で、海外にお出かけだった方も少なくないでしょうが、もしかしてオランダ・アムステルダムのスキポール空港を利用された方は、これをご覧になったかもしれません。

ごった返す国際空港ですが、異邦人に囲まれた個々の旅行者は案外、そこでは孤独を感じる時もあるでしょう。

そんな時に、異邦人同士が、言語の”壁”の心配なしに会話を楽しめるようにと、昨年12月のクリスマスシーズンに先駆けて、スキポール空港に設けられたのがこの特別シート1組。異邦人同士を会話で繋ぐので<connecting seats>と名付けられました。

設置したのはこの空港の”主”的存在のKLM Royal Dutch Airlineです。

この場面では、お母さんに抱かれた少女が「モンテビデオにサンタに会いに行くの」と言ったのに対し、フィンランドから来た男性が母国語で「おじさんはサンタが住んでる国から来たんだよ」と語りかけています。(KLMのCMですけどね)

どういう仕組みかというと、適度に離れて相対するシートのヘッドレストの左右にスピーカーがあり、顔の横に指向性の高いマイクが伸びています。

そこで、座った人が母国語で話しかけると、リアルタイムで相手の母国語に翻訳されて相手のシートのスピーカーから聞こえる仕組みです。

その言語選択は、このシートに案内した係りの方が調整するようです。使われているのはGoogleのCloud Speech、Cloud Translation、Web SpeechだとMediaShiftの記事にあります。

去年7 月に、このブログ「言語の壁が無くなる日は近い!」で紹介したように、スマホや専用端末による音声対応翻訳機能の進化は著しいようですが、こういう子供でも利用可能な座席型翻訳のスタイルを見せられると、その精度が上がれば、国連をはじめ、あらゆる国際会議場での丁々発止のやりとりも人間による通訳なしで可能になる日が近いことを感じずにはいられません。

そして、世界中の子供がネットを通じて言葉の壁を意識せずに語り合う時代がくれば、それはきっと世界平和の礎になるという夢も持たせてくれます。正月ですから。

なお、これをKLMとともに仕掛けたのは、DDB & Tribal Amsterdamというオランダの広告代理店で、KLMはこれをTVCMで流しました。その説明がこれ。Experiential advertisement(経験的広告)というそうです。

何組もの出演者が、本当の旅行者で、CM出演を「経験した」かどうかは確認できませんでした。このCMを紹介したAD of the Worldの記述には<Airports are crowded with people from different backgrounds. This Christmas, we brought them together with Connecting Seats. >と「過去形」で書いてありましたが。