プラスチック製品のゴミ(廃プラスチック)が海洋汚染につながり、その対応が世界的な課題になっている中で、ニューヨーク市在住の日本人デザイナーがみずからが起業したスタジオのメンバーとともに、瓢箪(ひょうたん)の実を”整形”した、地球に優しい使い捨てコーヒーカップなどを試作、将来の大量生産に向けて意欲を見せているそうです。

制作したのは、Jun Aizakiさん率いるCrème 。米国の建築・デザインサイトDazeenに掲載されたCrème 提供の現物写真はこれです。名付けてHyO-Cups。ヒョウタンのヒョウから取ってるんですね。

こういうのもあります。

日本酒のお銚子を思わせるカラフェですね。日本人デザイナーの感性でしょうか。

この瓢箪製の容器を作ったCrèmeデザインのJun Aizakiさんのプロフィールがサイト内に載っています。

それによると、1990年代初めに渡米し、NYCブルックリンにあるプラット大学建築学部を1996年に卒業し、大手建築デザイン事務所に勤めた後、2004年に独立して現在のスタジオを立ち上げたとのことです。これまでに、様々な賞を獲得した、ともあります。手がけた米国内外のプロジェクトも数多く、大活躍している印象です。

そのAizaki氏らが瓢箪容器に取り組んだのはなぜか。Fast Companyの記事によると、彼らがプラスチックの使い捨て容器を使うコーヒーショップの無駄な習慣について考え出したのは5年前だそう。どうしたら改善できるか。

「リサイクルする代わりに捨てる。それが生分解で母なる自然に戻る容器はないか」

ということで、目をつけたのが、昔から世界各地で飲み物容器として重宝されてきた瓢箪。しかし、そのままの形状ではいかにも使いにくい。

そこで、Aizaki氏が思いついたのが、母国、日本で行われている四角いスカイを作る仕掛け。型にはめて成長させる方法です。それを瓢箪にも適用するために、3Dプリンターでカップの型を作り、生った実に取り付けて成長させました。その結果がこれ。

これこそ、地球に優しい生分解性100%容器。ですが、普及化の道は容易ではなさそうに見えます。

実は、この瓢箪プロジェクトは、スタジオのあるブルックリンの裏庭で行いました。栽培数に限りがあるし、ニューヨークでは季節的にも夏しか出来ません。

Aizaki氏によると「瓢箪に実がなるまで1か月。(型にはめた)実が成長するのに2-3週間。十分な大きさになった実が飲用に耐えるように、太陽に当てて乾燥させるのに2-3か月」という長い時間がかかるのも難点。

Dezeenの記事では、この実験は、現在、輸送コンテナー内に設けたラボの中で、温度、湿度、水分などの管理をしやすい環境で行われているそうです。

そしてチームのメンバーはこう言ってるとか。

「全てのプロジェクト同様、我々はこじんまりとスタートし、次第に量を増やし、価格を下げるために規模拡大をすることを望んでいる。そうすればHyO-Cupsはプラスチック浪費業界に対抗する実際のチャレンジャーになれるだろう」

瓢箪にハイテクプリンターを組み合わせて廃プラの一助が実現すれば、それこそ瓢箪から駒が出るたとえそのものです。期待しましょう。