米国ではコロナウィルス の感染者が100万人を超えました。多くの州で外出が制限されるロックアウト状態が続いています。

このため、新聞をはじめとするニュースメディアには広告が集まらず、苦境に立たされていることを何回か紹介しましたが、ロックアウト状態による影響が、映画業界にも飛び火し、世界最大の映画館チェーンと米の大手映画会社との深刻な対立に発展しています。

米国の映画館は3月中旬から、次々、休館に追い込まれて、今はどこも開いていないよう。そのため、Universal Picturesは、4月10日に劇場公開を予定していた3Dアニメ「Trolls World Tours」を、AppleTVやAmazon Prime、XFiniteyなどのデジタルビデオプラットフォームで公開しました。視聴料は19.99ドル。(北米限定で日本からは見られません)

この公式予告編でも伺えますが、内容は明るいミュージックビデオ風でもあります。

それがロックダウン状態の全米の家族に受けたのでしょう、今週火曜日のウォール・ストリートジャーナルが消息筋の話として伝えたところによると、4月10日のオンラインリリース3週間で、なんと500万回視聴され、総売上は1億ドル近くに達したと言うことです。

HollywoodReporterによると、このアニメは2016年に大ヒットしたオリジナルの続編で、その時は最初の3週間の劇場での売り上げは1億1600万ドルだったそうで、それに迫る数字です。

しかもWSJの解説によれば、デジタルなら売り上げの80%がUniversalの収入になりますが、劇場公開だと50%しか入らない。消息筋は「デジタルでの収入額は7700万ドル」と明かしていますが、この額を劇場の売り上げから得るにはその倍の1億5400万ドルが必要になるのですから、いかに、デジタルでの公開が映画会社にとって”美味しい”かということです。

そこで、Universalの親会社であるNBCUniversalのCEO、Jeff Shell氏はWSJの記事に機嫌よくこう答えます。

「この結果は、我々の予測を超えた。PVODの可能性を示すものだ」

PVODとは premium video on demandの略。新作でヒットしそうな映画を個別料金でオンライン公開するもののよう。

そこまではよかったんですが、その次のセリフが大問題に。

「劇場が再開されたら、両方のフォーマットで新作の公開をするつもりだ」

これに世界最大の映画館チェーンというAMC TheatersのCEO、Adam Aronが、即日、Universalの会長あての公開書簡を発表します。(AMCは世界に約1000館、11000スクリーンがあると自社サイトで紹介しています)

「こんな一方的な方針は断じて受け入れられない。今後、Universalの映画は我々のチェーンでは一切、上映しない」「これは虚ろな、思慮に欠けた決断ではない」

なんで、こんなに激怒するのか?それは、映画会社と映画館の間には「Theatical window」という取り決めがあって、ロードショーの新作映画の上映権は75日間(NYTなどの記事によると90日とありますが)、独占的に映画館にあるはずなのに、それを勝手に破る行為になるからです。

ロードショーと同時にオンラインでも公開されれば、劇場に足を運ぶ映画ファンは当然、減ることが予想されます。それをAron氏は映画館にとって死活問題だと捉えたわけです。(Aron氏の公開書簡全文はここにあります)

これに、全米の映画館主の団体NATO( National Association of Theatre Owners)の代表も「UniversalはPVODの結果に大喜びしたんだろうが、この結果がハリウッド新標準のサインとして解釈されるべきではない」と、エールをAron氏に送りました

そして、AMCと並ぶ米国最大級の映画館チェーンRegal Entertainment42州で549館、7229スクリーン)も歩調を合わせて、Universal映画のボイコットを宣言したようです。

これに対して、CNNBusinessなどによるとUniversal側からは簡単なスポークスパーソンのコメントが出ただけ。公開書簡に表立った反論はせず、「話し合いましょ」みたいな。

まあ、本当の喧嘩別れは双方にとっても利益にならないので、いずれ、話し合いが行われるのでしょうが。でも、なんだか映画館主の姿が、「紙」の新聞消滅に怯える新聞経営者にダブって見えるのは妄想が過ぎるんでしょうね。