拙ブログの前回記事では、米国のPew Research Centerの調査で、「主としてソーシャルメディアからニュースを得ている人は、世の中のことに関心が薄く、知識も少ない」という事実を紹介しました。
プリント(新聞)が主なニュースソースだとする人たちは、概ね、その反対で、今、流行の”陰謀論”などに最も惑わされない存在なのは心強いことですが、如何せん、ソーシャルメディア派18%に対して新聞派が3%なのは残念、とも記しました。
その後、たまたま、今度は英国での調査で、この国でもソーシャルメディアがメインのニュースソースだとする人が相当数いることや、紙の新聞をお金を払って購読していても、新聞がメインのニュースソースだとする人が限られている、という、これまた別の意味で残念な結果を知りました。
これはPressGazetteが報じたものですが、興味を惹かれて元データを探して見ました。著名な調査会社YouGovが「新聞購読者の心のうち」と題して公表したものです。
それによると、新聞購読者であるにもかかわらず、「紙の新聞がメインのニュースソース」だとする人は17%に止まりました。
最も多かったのはテレビで20%、以下、ニュースアプリ、新聞社のニュースサイトと続き、ソーシャルメディアも10%でした。
紫が新聞購読者で、ピンクが非購読者です。新聞の非購読者との比較では、テレビがメインだとする人は10%少ないものの、ニュースアプリ、新聞社サイト、ソーシャルメディアでは、それほど差異はありません。
と言って、有料購読者と非購読者の態度に違いがないということではありません。YouGovのプロファイル分析で、とても興味深い結果が出ました。
紙の購読者(紫)」はオンライン版にも41%もが支払っていて、一つの新聞を贔屓にして新聞を変えない人が50%のほか、書籍についても、「みんなが読む前に新刊本を読みたい」が31%、「新刊本を常に把握しておきたい」が47%と、新聞にお金を出さない人(ピンク)とは明らかな違いがあったのです。
新聞派は活字好きで読書好きということでもあるってことでしょうね。そこで、先の「新聞を購読していても新聞がメインのニュースソースなのは17%」を振り返ると、一つのメディアを盲信せず、いろんなメディアに目を配るリテラシーの高さの反映だったかもしれません。それはそれで心強いことです。
しかし、Pewの調査でもそうでしたが、新聞派は高齢者に偏っているのです。YouGovの調査でも、新聞購読者の50%は55歳以上で、25歳未満はたったの12%しかいません。
PressGazetteの記事は、ロイタージャーナリズム研究所が今年1月に公表したレポートで、筆者の1人が「儲かる紙の商品は、彼らの読者とともに死ぬ」と書いたと紹介していました。
その「2020年 ジャーナリズム、メディア、テクノロジーのトレンドと予測」にあたってみました、その26ページ目にありました。大意はこんな感じ。
「大きくて儲かるマスメディアビジネスが、オーディエンスの高齢化と縮小と共に衰退しつつあることはしばらく前から明らかだった。収益性の高い紙の製品は、彼らの読者と共に死滅する」
そしてこうも。
「縮小する業界は死滅する業界と同じではない。将来のデジタルニュースビジネスが、困難で競争的な環境で発展しつつある兆候を見逃すな」
思えば、「経済紙以外、デジタル版の有料化は無理」とされていた時代に、敢然と有料化に踏み切ったNew York Times、9年目にしてデジタルの収入が紙の収入を上回ったというニュースはつい先日のことでした。
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