「紙」の新聞の衰退については、このブログで何度も嘆いていますが、コロナウィルスによる影響で、欧米では一段と拍車がかかったようです。そのことを、最近、公表されたオックスフォード大・ロイタージャーナリズム研究所の最新レポート「Digital News Report 2021」で知りました。

ロックダウンで、配達されなかったり、買いに行けなかったりで、流通が物理的に困難になったこともあり、デジタルへの移行が加速している一面もあるようですが、このグラフに見るように、コロナ禍は広まった昨年から、「紙」の新聞を読む人の減少カーブがキツくなりました。

コロナが大流行のブラジルでは、5年前に比べて28%も減少し、今やたったの12%。スイスでも26%マイナスの37%です。また、1年前に比べて、減らしている国が少なくないようです。比較的、死者の少ない、日本、韓国、台湾などに変化はありませんが。

物理的に「紙」の新聞が買えない、売れない、という状況の中で、新聞の「デジタル化」が進んでいて、そのオンライン版を購入する人が増えているのは事実です。ロイター研の2018年版を紹介した当方のブログ記事では、3年前にオンラインニュースを有料購読している人は調査した37カ国平均で14%でしたが、今回のレポートでは、北欧を中心に有料購読者が増えています。

特に、3年前は30%だったノルウェーは45%にもなりました。スウェーデン、フィンランド、デンマークを加えた北欧4カ国の平均は28%にも達します。また、3年前に16%だった米国は21%まで増えました。(ちなみに、日本は3年前の10%のままということになっています)

オンラインニュースにお金を払う人が着実に増えることは、「紙」で苦戦する新聞社の光明に見えます。しかし、ことは単純ではありません。レポートは米国と英国のこんな実例を<one striking finding>との表現で紹介しています。

 

 

これは、どういうことかと言うと、一番下のノルウェーの場合、有料購読者の57%が地元紙のオンライン版購読に支出しているのに対し、米国や英国では大違いと言うことです。

つまり、米国では、有料購読者のうち、1000紙以上にも達するというローカル紙や地域紙、地元のニュースサイトに支出している人は23%しかおらず、なんと31%がニューヨークタイムズに、24%がワシントンポストに、7%がウォール・ストリートジャーナルと契約して、その3大紙のうち、2つに支出しているケースが多いと言うことです。

英国でも事情は同じ。ローカル紙などの契約者はたったの3%で、その他はテレグラフ、タイムズ、ガーディアンの全国紙3紙で有料購読者のうち55%を抱えているということです。

このことについて、レポートはデジタルの世界でよく言われる「winner take all」をもじって、「winner take mostの類い」だと表現しています。

オンライン化に先行した著名紙に契約者が集中し、追随した「その他おおぜい」にはチャンスが少ないと言うことですね。

しかし、北欧ではノルウェーだけでなく、スウェーデンやフィンランドも、それぞれローカル紙の契約シェアは37%と31%に達していて、地域ニュースの健闘を窺わせています。まあ、これには「言葉の壁」が作用している面もあるのでしょう。

オーストラリア、カナダ、アイルランドなどの英語圏では、英米のオンラインメディアの契約率が高く、その分、自国のローカル紙とのオンライン契約が低いという結果になっています。

その意味では、難しい「日本語」に守られた日本の新聞業界は外圧がないように見えますが、冒頭に示したように、世界的に「紙」の新聞が衰退する中で、北欧のように「払ってもらえる」オンライン化を急がないと、新聞社自体がなくなっちゃうじゃないかと不安に駆られます。

ここでは触れませんでしたが、世界的にニュースへの関心が失われていることをレポートは指摘していました。その一方で、「新聞に取って代わる」と豪語するSustackのような、優秀な書き手を揃えたニューズレターのプラットフォームの台頭も目覚ましいだけに。