米大リーグのオールスターゲームは明日13日。その前にこんな記事に出会いました。

「オールスターゲームを迎えた米大リーグ2021年シーズンは、エンターテイメントとしての野球の質が低下していることを余すところなく示している。逆説的だが、それは豊富で正確な情報に基づいた合理的な行動から生じている」

こんな刺激的な書き出しで始まる記事をワシントンポストの電子版で見かけました。大谷翔平選手の活躍で、米大リーグMLBは大盛り上がり、かと思い込んでいたのでいささか虚をつかれました。

「野球はそのエンターテインメントの価値を失いつつある。ルールを変える時期だ」と題するコラムを書いたのはスポーツ担当記者ではなく、政治と国内外の課題を扱うコラムニストです。

その主張を、一口で言うと、今のMLBはデータに基づいてプレーするので、プレーのペースが遅くなり、打者によって内野手が守備位置をシフトするため安打が減るなど面白くない、ということです。

それを、筆者もデータを駆使して説明します。例えばこう。

5シーズン前にはヒット数は三振を3294本上回っていた。3シーズン前に三振がヒットを上回り、今シーズンは三振がヒットを5000個上回るペースだ」

「三振が16シーズン連続で増えているのは、現在の速球が93.8マイルで、4年前より2.7マイル上がってることもある」

「6月中旬時点での平均打率は.238は2019年を15ポイント下回る

「打者ごとの守備位置シフトは32%におよび、おそらく600本のヒットを消すことになろう。塁に出なければ盗塁も減る

「打席が三振、四球、ホームランで終わり、守備機会がないTTOの割合は昨年36%。1990年より10%増えた」

TTOとはThree True Outcomeの略語ですが、他のデータも興味深いのでご紹介。

左からPAsというのは打席に入った打者数、HRsはホームラン数、Ksは三振数、BBsは四死球数の略です。ホームランや三振、四死球が増えれば、野手が暇を持て余すTTO率は上がるということです。

「投手はデータに基づき、バットに当たらないように投げるので、球数が増え、試合時間が10年前より13分17秒伸びた

結果、試合は間延びし、塁上を賑わすランナーが少なく、内野手のファインプレーが生まれる機会も少ない。ゲームが生き生きしてない、ということです。「だから観客も2007年のピークから14%も減った」 だから思い切ってルールを変えないとマズイ、という主張です。

具体的には、ピッチャーズプレートを1フィート、後ろにするとか、内野手は2塁ベースの両側に二人づついなければならないとして、極端なシフトを制限するとか。投手が体調を戻して更なる速球を投げるのを防ぐため、投球間隔を20秒以内にするとか・・・・

同じ問題意識で書かれた、スポーツ・イラストレイテッドの記事では、こんな表現も。

「2015年以降、野球のデータ量にもムーアの法則のバージョンが適用され、データダンプによってゲームの速度が急速に落ちた」

そしてこう警告します。「分析能力の爆発的な進歩により、野球は運動能力に代わって、ボールをプレーさせない思考競技になった。今、野球は存亡の危機にある」

そう言えば、日本ではいっとき、野村克也監督の唱える「ID野球」が持て囃されました。でも、日本のプロ野球人気って、その頃から陰りがでたような気がしないでもない。ちなみにノムさんのいう「ID」とはImportant Dataということだったって初めて知りました。

この記事、テレビでMLBのホームランダービーを見てから書き出しましたが、本命視されていた大谷翔平選手、一回戦で負けちゃいましたね。MLB人気を盛り上げるスーパースターとして、打順一番で、投手としても先発する前代未聞の明日のゲームではどんなプレーを見せてくれるのかな。