ウクライナに侵攻したロシア軍、東部に戦力を集中して大攻勢をかけ始めたようです。現地の方々の恐怖はいかばかりかと胸が痛みます。

その戦火の中、自国の戦いを英語で発信し、世界にアピールし続けて注目を集めているメディアがあります。

The Kyiv Independent>キーウ・インディペンデントです。そのスタートはロシア侵攻の数ヶ月前の2021年11月11日。シリア出身の実業家が所有する英字紙Kyiv Postを解雇された30人ほどによって立ち上げられました。

その理由は、インディペンデントのサイトにある<about>によれば「編集の独立の原則に従ってきた編集部を完全に支配しようとした所有者によって」解雇されたことにあります。

そのためか、aboutでは「お金持ちやオリガヒルに依存しない」とも書いています。この戦争中に広告が入るわけもありません。しかし、日々最新ニュースを追加してサイトを更新、フォロワーが210万人に達したTwitterをはじめ、FacebookInstagramTelegramLinkedInのソーシャルメディアでも世界に向けて全面展開しています。一体全体、どうやってお金をやり繰りして、今現在6カ国30人(日本人も一人います)もの組織を回しているのか?

その疑問を最近のFinancial Timesの記事が解いてくれました。まずこう書きます。

「キーウ・インディペンデントの読者が急増していることは、紛争に関する報道が世界的に関心を集めていることを考えれば理解できる。しかし、この成功は、小規模な出版物や個人の作家が、クラウドソーシングサイトや購読プラットフォームを通じて資金を調達し、ブランドを確立していくという、より広い傾向を象徴するものでもある」

Substackの成功などを頭においてのことでしょうが、それだけではありません。ライターだけでなく、いろんなアーチストもその恩恵に浴していますが、その対象の幅が広がっているようです。

その流れにインディペンデントも乗りました。立ち上げ間もない昨年11月24日に、GoFundMeで、ロンドンに駐在するCFOのJakub Parusinskiが<Keep the Kyiv Independent going>で募金を呼びかけ、1万5700人から総計150万ポンド(2億5千万円)の開業資金を調達しました。

次いで、本来、クリエーター支援をうたい、そのパトロンになることをテーマとするPatreonにも登録、今現在では毎月5ドルから100ドルまで5段階の寄付金を出してくれるパトロンが6979人もいて、毎月7万4030ドル(956万円)も定期的に入手しているのです。30人世帯で取材費もかかりますから、楽ではないでしょうがベースの収入が確保されているのは心強いことでしょう。今後もパトロンは増えることでしょうから。

CFOのJakub Parusinskiは、コンテンツのマネタイズ方法をメディアにアドバイスするJnomics Mediaのマネージングパートナでもあるそうで、GoFundMeで別の募金活動も行ない、1億5700万円を集めているなど、なかなかのやり手でもあるようです。

元はKyiv Postの副編集長で、3月のページビューが750万まで成長したIndependentの編集長をを務めるのはOlga Rudenkoさん。ご覧のようにたおやかな印象さえ漂う女性ですが、「パトロンからの資金で、より野心的で包括的な報道が可能になった」と感謝するとともに、過労気味のスタッフをサポートするための増員にも言及し、やる気満々のようです。

米国は軍事面でウクライナに肩入れしていますが、米国の寄付文化に根付く二つの寄付・献金プラットフォームは、それとは別の面で力になっていて、同時に、FTが指摘するようにメディアの世界を少しづつ変えていくのを予感します。