日本以上にインフレ圧力が高まっているかに見える米国で、ガソリンだけでなく、新聞用紙も高騰していて、倒産を防ぐために更なるジャーナリストの削減もありうるとの見方が出ているとシアトルタイムズが伝えています。
新聞用紙の高騰は、どうやら北米の製紙工場が紙の新聞の激減に合わせて、新聞用紙の生産を縮小し続けているためのようで、最大の新聞チェーンGannettの今年第1四半期決算の収支報告では、新聞用紙が昨年同期に比べ37%上昇し、これに加えて配達のガソリン代、配達要員不足でコストは昨年同期比で1500万ドルも増加したと強調されていて、新聞用紙への言及は5回にも及んでいます。
おりしも米国勢調査局が1週間ほど前に、<Internet Crushes Traditional Media: From Print to Digital:インターネットが伝統メディアを破壊する:プリントからデジタルへ>と題するリリースを出したばかりなのを思い出しました。お役所のリリースとも思えないつくりです。
そこでは、<新聞社の収入は20年前の半分以下になった。Facebook、Google、Amazonといった巨大プラットフォームが新聞社の広告収入を奪い取った”犯人”だ>とし、調査局の統計学者は<デジタルメディアとテクノロジーの台頭でニュースとエンタメへのアクセス方法が変わったのだ>と断言します。
そこで新聞は人員削減と事業の統合で対応してきており、労働統計局の「雇用及び賃金統計」によれば2002年の業界全体の収入は461億ドルだったものが2020年には221億ドルになり、編集局の総数はピークだった2006年の7万4千人から2020年には3万人強まで落ち込んだと指摘しました。
これを紹介した政治サイトThe Hillは、この3万人という数字について「お菓子のケロッグやスーパーのスプラウスで働く人の方が多い」と嘆きます。そしてPewのfact sheetを引用し、紙の新聞を受け取っている人=発行部数は1984年の6334万部から2020年には2429万部まで減り、人々は<dead-tree=紙>版の新聞を見限りつつある、とまで書いていました。
国勢調査局のリリースにはインフレ圧力の影響には触れていませんでしたが、そこに注目したシアトルタイムズは、同じワシントン州にあるスポークスマンレビュー<Spokesman-Review>が、先にあげた新聞用紙、ガソリン代、配達員不足で、差し当たり旅客機のように「燃料サーチャージ」を定期購読者に課すかもしれないと伝え、シアトルタイムズ自身、用紙の値上げで100万ドルの打撃になることから、各地で進行する発行日の削減の可能性にも言及しています。
しかし、そうした措置は「読者の忠誠心をテストすることだ」、つまり読者離れを引き起こしかねないとも自戒しています。購読料値上げ、サーチャージ、ページ数削減、発効日削減などがちらつく中、同紙のAlan Fisco社長はこう憂慮しているとありました。
「私の最大の懸念は、これだけでは不十分かもしれないということだ。更なるスタッフの削減、とりわけ編集局の。そして新聞の停止」
2022 年 6 月 14 日 at 19:49 PM
いつも根拠あるデータありがとうございます