Title: | 冷え込んだNFTアイテム市場の活性化 ―生活者ニーズ調査からの提言 |
Updated: | 2024/02/09 |
Category: | 市場分析 |
Areas: | 日本 |
冷え込んだNFTアイテム市場の活性化 ―生活者ニーズ調査からの提言
NFT(Non-Fungible Token、非代替的トークン)はデジタルアイテムに唯一性を付与し、その真正性や所有権を担保する機能を持つ。NFTに紐づくことで、容易に複製できるデジタルアイテムは稀少な「一点物」として資産価値を持つようになる。2021年にNFTアート「Everydays—The First 5000 Days」が約6935万ドルで落札されたことをきっかけに、NFTアイテムへの大衆的な関心が高まっており、クリエーターや企業の参入が相次いできた。しかし、2022年以来、アイテム価格や取引量の低下により市場が冷え込んでいる。
市場低迷の原因には需要に対する供給過剰がある。不況を乗り切るために、NFTアイテムに「本物のユーティリティを提供する必要がある」と専門家が指摘する。また、NFTの普及には「所有者の体験価値を高めるサービス設計」の重要性をリサーチャーが呼びかけている。事業関係者も「むしろこんな時こそ、世界を変える本物のユーザー体験と技術を生み出すチャンスだ」と考える。こうした共通認識があるものの、「本物のユーティリティ」「所有者の体験価値」「本物のユーザー体験」は何かが十分に解明されているとは言えない。この問いへの一つのアプローチとして、本稿では生活者がNFTに期待する価値は何かをアンケート調査を行い、市場活性化に向けた対策を探る。調査にあたって、代表的な5つのユースケースよりNFTアイテムが提供する生活者にとっての価値を考察し、設問項目を設計した。
調査結果から、生活者は「稀少アイテムを自分で楽しむ」体験価値や、「クリエーターを応援する」「稀少アイテムを所有するだけで嬉しい」といった情緒価値を求めていることが分かった。特に10代男性は、「NFT所有者限定の活動やプロジェクト運営に参加する」体験価値に対する関心が高いことが明らかになった。