2020年7月にゴミ袋が有料化され、同年10月には菅首相が「カーボンニュートラル宣言」を発表したことなどから、環境への関心が高まっている。また、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリの影響もあり、環境への意識が高いのは若者が中心という印象がある。
そこで、本コラムでは、KDDI総合研究所が2021年6月に全国16~69才を対象に実施した環境に関する意識調査の結果から、環境に関する意識について紹介する。
1.環境問題に関する知識
最初に環境問題に関する知識について、性別や年代での特徴を見てみよう。今回のアンケートでは、「SDGs」や「パリ協定」、「カーボンニュートラル」などの認知度について調べている。その結果、明らかになったのは、男性は環境問題に関する知識が女性よりも多いということである。例えば、「カーボンニュートラルの内容を知っている」と回答した人の割合は、男性では最も少ない40代でも26.2%が知っている一方、女性では最も内容を知っている10代でも22.3%にとどまる。10代から60代まで全ての年代で、男性が女性を大幅に上回っている。
この環境問題に関する知識について、男性が女性を上回る傾向は、「カーボンニュートラル」以外にもあてはまり、「パリ協定」でも同じようなことが言える。10代では男女差が6.8ptにとどまるが、20代以上では、男性が女性を11pt以上上回る。
2.環境問題に関する意識と行動
環境問題に関する”知識”では男性が女性を上回っていたが、環境問題への”関心”と”取り組み”に関しては、女性が男性を上回る結果となっている。
環境問題に関心を持っていると回答した人は、女性では全ての年代で50%以上いる一方、男性で10代と60代では50%を超えているが、20代から50代では50%を下回っている。10代を除く全ての年代で女性が男性を上回っている。
「環境に配慮して取り組んでいることがあるか」という問いでは、この男女差が更に拡がる。女性は10代から60代まで全ての年代で環境に配慮した取り組みを行っている人の割合が90%を超えているのに対して、男性では概ね80%程度にとどまっている。
3.まとめ
上記のとおり、環境問題に関する知識では、男性が女性を上回っているが、環境問題への関心や取り組みは逆に女性が男性を上回っており、男性は環境問題に関する知識のみを習得しており、それが意識や行動につながっていない人が多いことがわかる。
環境問題への取り組みを強化していくには、男性の意識改革と実行力が試されると言える。
KDDI総合研究所シニアアナリスト 今村一晃
参考レポート:調査レポートR&A「環境を意識した購買は60代女性がキーパーソン」(2021年8月5日)