なぜマスプロダクトはヒットしづらくなったのか(後編)〜マスプロダクト受難の時代における成功の共通点
前回のコラムでは、マスプロダクトがヒットしづらくなった理由を大局的に振り返った。その際、生活者のニーズ別に、世の中の商品を便宜的かつ簡易的に3つに分け、各領域でマスプロダクトが生まれづらくなった主な理由を考察していった。今回は、このマスプロダクト受難の時代の中での成功事例に着目しようと思う。近年の新しい潮流の1つとして見られるのは、「体験」が伴う商品への支持だ。各領域を順番に追っていく。
研究員がひも解く未来
なぜマスプロダクトはヒットしづらくなったのか(後編)〜マスプロダクト受難の時代における成功の共通点
前回のコラムでは、マスプロダクトがヒットしづらくなった理由を大局的に振り返った。その際、生活者のニーズ別に、世の中の商品を便宜的かつ簡易的に3つに分け、各領域でマスプロダクトが生まれづらくなった主な理由を考察していった。今回は、このマスプロダクト受難の時代の中での成功事例に着目しようと思う。近年の新しい潮流の1つとして見られるのは、「体験」が伴う商品への支持だ。各領域を順番に追っていく。
「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」と日経新聞(2022年7月12日)が報じた。報道後すぐにニコンが声明を出し、この「撤退」というのは日経の憶測であり、実際は一眼レフカメラの開発を「停止」しているのだと訂正した。撤退ではないとはいえ、なぜ世界的なカメラメーカーが開発を停止するに至ったのか?それは当然ながら以前のように売れなくなったからだろう。
「サブスクビジネスでは、寝ている虎は起こしてはいけません(休眠会員はそっとしておいて、そのまま儲け続けましょう)」(某コンサル企業日本法人代表) これは2018年に開催された企業向けセミナーでのサブスクの専門家による発言だ。当時は特に問題にならなかったが、今なら炎上するかもしれない。 サブスク(サブスクリプション)とは、ユーザーが月額制でサービスを利用する形態のビジネスだ。
アップサイクルにもD2Cが効く〜ブランド公式リメイクが増えている
ある物語のワンシーンだ。こわれた器を修復する職人のつばめと、たまたま縁あってそこを訪れた絵麻。修復されたばかりの器を見て「これ素敵ですね」と顔をほころばせる絵麻に、つばめが説明する。 「金継ぎっていうんだ。割れたり欠けたりしたところを漆で継いで金粉で化粧をすること。金で繕ったその模様のことを『景色』っていうの。ただ直すんじゃなくて傷を『新しい景色』に変えていくんだ。これ、俗にいう世界に2つとないもの。」
アパレルD2Cブランドの受注生産が増えている〜受注生産+待ち時間の価値化で廃棄を減らす
2022年1月、フランスで売れ残った新品の衣料品の廃棄が禁止となった。余った商品は寄付やリサイクルの対象となり、違反したブランドには最大15,000ユーロ(約210万円)の罰金が科せられる。ファッション最先端の国は規制も最先端だ。こうなった背景にはファッション界特有の負の側面がある。ファッションブランドは売り逃がしという機会損失を避けるために需要をはるかに上回る量の商品を供給することが商習慣となっている。
D2Cの全盛期はこれから 〜サステナビリティの時代に活きるダイレクト接点
コロナ禍でも増える古着屋 東京世田谷の下北沢は古着の街として有名だ。日本は寺社仏閣の数(約15.6万箇所)がコンビニの数(約5.6万箇所)より多いと言われるが、ここ下北沢ではコンビニよりも寺社よりも古着屋が多い。昨今、コロナの影響で撤退した飲食店の跡地にも古着屋が続々と新規出店している。
米ワシントン州に住むスーザン・シグムンドにはお気に入りの新興スニーカーブランドがある。 ある日スーザンがこのブランドのラインナップをスマホで眺めていたところ、スカイブルーのスニーカーに目が奪われた。しかしそれは男性向け商品とある。 そこでスーザンはこのブランドのインスタグラムアカウントに対して「おねがい!!この男性向けの青いシューズを女性向けにも出して!出してくれたらすぐに買うから!」と投稿した。