なぜマスプロダクトはヒットしづらくなったのか(後編)〜マスプロダクト受難の時代における成功の共通点
前回のコラムでは、マスプロダクトがヒットしづらくなった理由を大局的に振り返った。その際、生活者のニーズ別に、世の中の商品を便宜的かつ簡易的に3つに分け、各領域でマスプロダクトが生まれづらくなった主な理由を考察していった。今回は、このマスプロダクト受難の時代の中での成功事例に着目しようと思う。近年の新しい潮流の1つとして見られるのは、「体験」が伴う商品への支持だ。各領域を順番に追っていく。
研究員がひも解く未来
なぜマスプロダクトはヒットしづらくなったのか(後編)〜マスプロダクト受難の時代における成功の共通点
前回のコラムでは、マスプロダクトがヒットしづらくなった理由を大局的に振り返った。その際、生活者のニーズ別に、世の中の商品を便宜的かつ簡易的に3つに分け、各領域でマスプロダクトが生まれづらくなった主な理由を考察していった。今回は、このマスプロダクト受難の時代の中での成功事例に着目しようと思う。近年の新しい潮流の1つとして見られるのは、「体験」が伴う商品への支持だ。各領域を順番に追っていく。
「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」と日経新聞(2022年7月12日)が報じた。報道後すぐにニコンが声明を出し、この「撤退」というのは日経の憶測であり、実際は一眼レフカメラの開発を「停止」しているのだと訂正した。撤退ではないとはいえ、なぜ世界的なカメラメーカーが開発を停止するに至ったのか?それは当然ながら以前のように売れなくなったからだろう。
なぜ金沢21世紀美術館は国内トップクラスの集客力があるのか〜美術館の定石の逆を攻めて大成功
以下は2019年における国内ミュージアムの来場者数ランキングだ。1位 国立科学博物館 273万人 2位 東京国立博物館 258万人 3位 金沢21世紀美術館 233万人 4位 国立新美術館 184万人 東京の国立ミュージアムに混じって、金沢21世紀美術館(以下「21美」)という地方の市立美術館がランクインしていることに驚く。同館は2015年のこのランキングでは首位を、そして世界的に新型コロナに見舞われた2020年においても2位を獲得しており、トップ3圏内の常連となっている。
アートとAI(後編)〜AIは脅威にあらず、アーティストがAIを使いこなすようになる
前回のコラムでは、当面はAIがアーティストの脅威にはならないであろうことを、ファクトを基に考えた。一方で、アーティストがコンセプトを作り、それを表現するためにAIを活用するケースが少しずつ出てきている。それらは、AIを使っている点では、前回紹介したMidjourneyの作品と同じだが、提示したいコンセプトのための表現手段としてAIを使っているところが大きく異なる。アートワールドに食い込んでいけるのは、このようなAIの使い方ではないだろうか。今回はこのあたりに着目したい。
アートとAI(前編)〜AIはアーティストにとって脅威にはならない
2022年8月、米コロラド州で開催されたアートコンテストのデジタルアーツ部門で、画像生成AI「Midjourney」が作成した作品が優勝に選ばれた。この作品を出品したジェイソン・アレン氏は、ボードゲーム会社の社長であり、アーティストではない。この出来事を受けて、SNSでは「AIを使えば、誰でもアート作品を作れようになった」、「アーティストが不要になる」、「アートの概念が根本から変わる」などのコメントが飛び交った。アレン氏本人も、受賞後にニューヨークタイムズの取材に対して「アートは死んだ。もう終わった。AIが勝ち、人間は負けたんだ。」と言い放っている。 果たしてそうなのか?AIはアーティストを脅かす存在なのか?今回はこれを考える。
体験型アートによる新しいお金の流れ〜チームラボがアートワールドのタブーをひっくり返した
前回に引き続きチームラボの話だ。前回は、チームラボの体験型デジタルアートが、どのようにアートワールドで評価を得てきたのかをまとめた。実はチームラボによる革新は他にもある。アートの新しいお金の流れを作ったのだ。スープストックトーキョーなどを立ち上げた連続起業家であり、アートコレクターでもある遠山正道氏はこう評する。 「チームラボはアートにおける新しいお金の流れを作った。
チームラボはなぜ世界で認められたのか〜体験型デジタルアートの源流を探る
「時代を大きく変えたシリコンバレーのIT起業家たちは全員と言っていいくらいチームラボの作品を持っています」(チームラボ代表 猪子寿之氏) 世界を動かしているシリコンバレーの起業家たちはチームラボを愛好している。チームラボの作品を求めているのは個人コレクターだけではない。世界のミュージアムもチームラボの作品を所蔵し始めている。また、チームラボには世界各国からデジタルアート展のオファーが舞い込み、さらにはデジタルアートミュージアム「ボーダレス」展でギネス記録を更新するくらいの人を集めた。世界がチームラボを求めているのだ。
世界中でデジタルアート展を開催するチームラボが2019年にある偉業をとげた。東京開催の「ボーダレス」展の年間動員数(約220万人)が、単独アーティストのミュージアムとしては世界最多となりギネス世界記録を更新したのだ。ちなみにそれまでのトップ3は、オランダのゴッホ美術館(年間来館者数:約213万人)、スペインのピカソ美術館(同:約107万人)、スペインのダリ美術館(同:約82万人)だ。これらに勝ったのだ。スゴすぎる。
「サブスクビジネスでは、寝ている虎は起こしてはいけません(休眠会員はそっとしておいて、そのまま儲け続けましょう)」(某コンサル企業日本法人代表) これは2018年に開催された企業向けセミナーでのサブスクの専門家による発言だ。当時は特に問題にならなかったが、今なら炎上するかもしれない。 サブスク(サブスクリプション)とは、ユーザーが月額制でサービスを利用する形態のビジネスだ。