濃厚接触者になった(その3)


同じ飛行機に乗っていた乗客の中から陽性者が出たため、濃厚接触者になってしまった件続編の続編。

政府指定のホテルでの3日間の待機期間の最終日となる30日、本来なら検査をして陰性なら自宅に戻れるはずだったが、濃厚接触者となったため、東京都指定のホテルに移動してさらに11日間待機することになった。

今いるホテルは両国、次に行くホテルは品川、直接行けば30分くらいで行けるところ、専用バスで移動しないといけないので一旦成田空港へ戻り、それから品川行きの専用バスに乗るという経路をたどることになる。

こういう経路は貨物や郵便物なら当たり前だろうが、人間の移動手段としてはいかがなものか。隔離対象だから人間としての扱いは望めないのかもしれない。

14時頃客室の電話が鳴り、午前中に受けた検査の結果は陰性だったと知らされた。成田空港行きの専用バスは16時頃に出発することになっているが、準備ができたら呼ぶのでそれまで部屋で待つようにとのこと。

15時半頃からいつでも出られる態勢で待っていた。ところが電話はなかなかかかって来ない。16時を過ぎてもまだ来ない。ときおり他の部屋の電話が鳴っている音がかすかに聞こえる。ドアが開閉する音も聞こえる。他の人は順次退所しているようだ。しかし自分の部屋の電話は鳴らない。

16時半になってもまだ電話は来ない。トイレに行きたくなったが、トイレに行っている間に電話が来たら困るので、行くのを控えた。

成田空港から出る専用バスは18時に出発すると聞いていた。現在地から成田空港までは1時間はかかる。遅くともここを17時には出発しないと成田空港からの専用バスに間に合わないかもしれない。

もし成田で専用バスに乗り遅れたらどうすればいいのかわからない。保健所の担当者には連絡する術がない。まあ、同じ境遇の乗客は他にもいるだろうから、皆んなに付いて行けば何とかなるだろう。とにかく乗り遅れないことを祈るのみ。

17時を少し過ぎてやっと電話が鳴った。バスが到着しているので降りてくるようにとのこと。その際、部屋のゴミを分別して袋に入れて部屋の外に出すようにとの指示があった(もっと早く言ってくれれば待っている間にやっておいたのに)。

急いでトイレに行ってからゴミをまとめて外に出し、部屋を出て1階ロビーへ行くと、係の人はたくさんいるが、同じ境遇の乗客らしき人は見当たらない。

受付でカードキーと体温計を返し、バスに乗り込んだ。既に数人が乗っていた。同じ境遇の人たちはここにいた。空いている席に座った。バスはまだ出る気配がない。しばらくして同じ境遇らしき人がまた1人乗り込んで来た。

何と、退所の手続きを1人ずつやって1人ずつバスに乗り込んでいるようだ。だからものすごく時間がかかり、予定の出発時刻を大幅に過ぎてしまっているのだろう。

バスが出発したときは17時20分になっていた。成田に着くのはおそらく18時半頃になるだろう。専用バスの出発時刻は大幅に過ぎてしまうが、これだけ同じ境遇の人がいるのだから何とかなるだろう。

予想どおり成田空港には18時半頃に到着した。バスを降りると全員がターミナルの中へ入り、名前の確認をした。既に名簿ができているらしかった。それもそのはず。隔離すべき乗客は完全に把握し、管理しているはずだ。

既に成田空港に来ていた他の飛行機の乗客も含め、その場に集まったのは18人。ここから行き先別に分けられ、品川プリンス行きは9人となった。バスが来るまでしばらく待たされ、出発したのは19時頃。

そして目的地のホテルに着いたのは20時頃。係の人が来るまでバスの中で待つように言われる。それからまた1時間以上も待たされた。

バスの中で待っている間に「入国者健康確認センター」というところからスマホに電話がかかってきた。何か大事な連絡かと思い、応答すると、MySOSアプリによる居場所確認のビデオ通話だった。

このビデオ通話は相手と何か話すわけでなく、AIによる自動通話だ。通話が切れるまでの間ただ自分の顔と周囲を撮影し続けるだけ。その間にセンターの方で居場所の情報を取得して、本当にその場所にいるかどうかを確認するらしい。

このビデオ通話がかかってくる前に、予告のメッセージが来るので事前にわかるが、そのときはこのメッセージを見逃していたので、車内で突然ビデオ通話をすることになり困惑した。

MySOSアプリのメッセージ

バスの中でも居場所を知らせる意味があるのかどうかわからなかったが、とにかく通話が切れるまでの間、自分の顔と車内を撮影し続けた。メッセージをよく読むとマスクなど顔を隠すものは外すようにと指示があったが、それを知らずにマスクをしたまま撮影してしまった。

21時15分頃に係の人が来た。やっと降りられると思ったら、名前を呼ばれた人から1人ずつ降りるようにとのこと。ここでもなかなか名前が呼ばれない。とうとう一番最後になって名前が呼ばれた。22時。

宿泊(入所)の手続きはもちろん一般客とは別になっている。倉庫のような場所の入口から入り、第1ポイントでカードキーや説明書類などの入った封筒をもらい、第2ポイントで体温計やタオルや弁当を受け取り、先へ進んでエレベータに乗って部屋に入る。

前のホテルを出てから約5時間という長い道のりとなったが、何とか次のホテルにたどり着くことができた。