FlightCarで思わぬ損失


空港で預かった車を貸し出すことで停めたい人と借りたい人をマッチングするサービスを展開する「FlightCar」を利用して、思わぬ損失を被った。

FlightCarのホームページより
FlightCarのホームページより

FlightCarのコンセプトはなかなか面白い。空港に車を停めたい人は、有料駐車場に停める代わりにFlightCarに持って行けば、無料で何日でも預かってくれる。その上洗車までして返してくれる。

その代わり、FlightCarは預かった車を、借りたい人に貸し出す。借り手がついたときは走行距離に応じた使用料が車のオーナーに支払われる。

借り手がつかなかったときでも、無料で何日でも停められるというメリットはなくならないので、車のオーナーにとってリスクはない。

車を借りたい人は、レンタカーを利用するよりもずっと安く借りられる。

間に入るFlightCarは、車を用意するための初期コストなしでレンタカーと同じようなビジネスが運営できる。

停めたい人も借りたい人も間に入るFlightCarも、みんなハッピーになれるという、アイデアサービスだ。

今まで「停めたい人」の立場で何回か利用してみた。最初の頃は若干トラブルはあったものの、徐々に改善され、なかなかいいサービスだと思えるようになった。

先日シアトルに旅行したときに、初めて「借りたい人」の立場で利用してみた。

事前にWebサイトで調べたら、レンタル料金は保険料込みで1日あたり20ドル程度だった。確かにレンタカーよりはずっと安い。

借りる際に受けた説明でわかったのは、料金に含まれている保険は「対人」や「対物」だけで、自分が借りた車の損害をカバーする「車両保険」は付いていないということだった。

何かあったときには最悪、車の価値に相当する金額を払わされる可能性があるとのことだった。それでは安心して乗れないので、オプションの車両保険も付けることにした。結局トータルで1日あたり62ドルと、レンタカーとあまり変わらない金額になってしまった。

レンタカーを借りたと思えばいいか、と自分に言い聞かせて借りた。借りている間は特にトラブルもなく、無事に車を返して精算を済ませた。結局保険料は払い損になってしまったが、保険とはそういうものだから仕方がない。

それから何か月か経って、FlightCarから突然、29.15ドルをクレジットカードにチャージしたとのメールが来た。精算は済んだはずなのに。

メールには「通行料違反」との記載があり、金額の内訳は、シアトルの橋の通行料が4.15ドルと、手数料が25ドルだという。

確かにシアトルで車を借りたときに、一度橋を渡った。計画的に渡ったわけではなく、たまたま橋を渡る道路に入ってしまい、そのまま渡ってしまった。

渡る前にも渡った後にもゲートや料金所などはなく、みんな素通りしていたので、流れに乗って素通りしてしまったが、特に違反などはした覚えはない。

そのときの通行料が今になって請求されたのだろうから、4.15ドルは受け入れよう。だが手数料の25ドルとは何だ。そんなものがかかるとは聞いてないぞ。処理に多少の手数はかかるのだろうが、通行料の6倍とは法外ではないか。

FlightCarのカスタマーサービスに、この「違反」の内容と金額の詳細を教えてくれとメールをしたら、驚いたことに10分後に返信が来た。こんなに迅速な対応は珍しい。

ところが返信の内容は、「提供条件では通行料を払わずに橋を渡ると通行料と手数料を払うことになっている」との説明だけ。

FlightCarのWebサイトで「提供条件」を探し当ててよく読むと、たしかにその旨の文言があった。借りる前にここまで詳しくは読んでいなかった。借りる際にサインした書類にもその旨の記載はなく、担当者からの説明もなかった。

「提供条件に書いてあることはわかったが、借りる際にその旨明確に説明しないのはアンフェアではないか」と反論すると、またすぐに「通行料を払わないで有料道路を通ったときは、その旨事前に知らせないと通行料の他に25ドルの手数料がかかることになっている」との返事が来た。

そんなルールがあるなら事前にきちんと説明してくれないと困る。「事前に何も説明がなかったので、4.15ドルの支払いには応じるが、25ドルの支払いには応じられない。返金を要求する」と強めに申し入れてみた。

それに対しては、「書類にサインしているので提供条件は同意されている」との返事が来ただけだった。事前に説明しなかったことについては何のお詫びも反省の弁もない。

これ以上頑張って交渉したとして、仮に25ドルを返金してもらえたとしても、それを上回る損失分の労力になってしまうと判断し、返金の要求は泣く泣く断念した。

FlightCarに騙されたとの思いはいつまでも消えない。借りる立場でこんなことがあると、停める立場でも利用する気がしなくなる。

不覚にもまた落とし穴に落ちてしまった。落ちた方が悪いという見方もあるだろうが、落とした方がはるかに悪いに決まっている。

落とし穴で儲けるようなビジネスをしてはいけない。