自動運転車のAIをドライバーとみなす


米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、自動運転車については人工知能(AI)をドライバーとみなすとの見解を示したと、Reutersが報じた、

米国には自動車の安全性を確保するための技術基準が「連邦自動車安全基準(FMVSS)」として定められているが、これは1967年に施行されたもので、当然「車は人が運転する」との前提で策定された基準だ。

米国では車は右側通行だから、ドライバーの席は(後ろから見て)左側になる。それに合わせてハンドル、アクセル、ブレーキ、その他の機器類や計器類を、ドライバーの席に(またはその付近に)設置しなければならないなどの基準が定められている。

ところがこれは人間が運転しない自動運転車には必ずしも当てはまらない。もちろん、ほとんどの場合は自動運転でも、いざというときには切り替えて人間が運転できるようになっているタイプの自動運転車であれば、現行の基準に従って設計すればいい。

Googleが計画しているのは、最初から最後までAIが運転する完全自動運転車(NHTSAの分類ではレベル4)だ。下手に人間が介在できるようにすると、かえって安全性が損なわれるので、ハンドルなど人間が運転できる手段を失くしてしまおうというものだ。

Googleの自動運転車(プロトタイプ車)(Googleのホームページより)
Googleの自動運転車(プロトタイプ車)(Googleのホームページより)

このような自動運転車の場合、安全基準がどのように適用されるのかという問題が顕在化した。そもそも人間が運転しないのだから「ドライバー」はいない。「ドライバーの席」もない。

Googleは2015年11月、NHTSAに書簡を送り、現在開発・実験中の自動運転車について自動運転システム(SDS)、すなわちコンピュータ(ソフトウエア)を安全基準で規定する「ドライバー」とみなすよう求めた。

これに対し、NHTSAが2月4日にGoogleに返信の書簡を送り、基本的にはGoogleの言うとおり、SDSをドライバーとみなすとの見解を示したものだ。

これは何を意味するのかについて、The Christian Science Monitorが以下のような点を挙げている。

  • 自動運転車には人間のドライバーが乗っていなくてもいい。
  • 自動運転車にはハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルなどが付いていなくてもいい。
  • 事故などが起こった際には、自動車メーカーやソフトウエアエンジニアに責任がかかってくる可能性がある。

もっとも実際に公道を走る自動車は各州の規制を守らなければならず、連邦がいいと言っても州がダメと言ったらダメだ。例えばカリフォルニア州では、運転免許を持った人間が乗っていないとダメということになっている。

また、FMVSSの適用についても、現時点ではAIをドライバーとみなすというように実際の規則が変更されたわけではないので、現時点では、Googleは安全基準の適用除外を申請して許可を得る必要がある。

今後、自動運転車の実現に向けて、州や連邦政府が現行規則を変更したり新たな規則を制定したりする必要があるので紆余曲折も予想されるが、とりあえず、今回「人間のドライバーが乗っていなくてもいい」との判断が示されたことは大きな前進だ。