DISHとEchoStarの再統合は「未来への投資」


DISHとEchoStarの再統合は「未来への投資」のため、とチャーリー・アーゲン会長が述べているが、業界のアナリストは必ずしも同意していない。DISH NetworkとEchoStarは再統合する、と8月8日に発表した。両社はもともとは1つの会社(EchoStar Communications)だったが、2008年1月に直接放送衛星(DBS)によるTV事業のDISH Networkと衛星通信事業のEchoStar Corporationに分離し、これまで別会社として運用してきたという経緯がある。

いずれにしてもアーゲン氏が両社の会長を務めているのだから、分離も統合もそれほど困難ではないだろうが、せっかく分離した両社をなぜまた統合するのか。

これについて、Light Readingによると、「未来への投資」だとアーゲン会長が述べている。地上系と衛星系のクラウドネイティブの5Gネットワークを統合するという未来像を描いており、そのための投資だとしている。

アーゲン会長はさらに、ライバルのAT&TとVerizonに対しては、配当金の支払いばかりに注力して未来への投資をしていないと批判している。

ただ、業界のアナリストたちは必ずしもアーゲン会長の発言を鵜呑みにはしていない。たとえばNew Street Researchのアナリストは、DISHとEchoStarの再統合は戦略的なものというよりはキャッシュが目的だと見ている。

EchoStarが保有する17億ドルのキャッシュをDISHが使えるようにするためだという見方だ。その背景には、DISHが資金不足のために5Gネットワークの拡張を一時停止していたという事情がある。

MoffettNathansonのアナリストも、この再統合はDISHがEchoStarの資産を使えるようにするためのものに他ならないが、それでもまだ足りないだろう、と述べている。

一方、Raymond Jamesのアナリストは、この再統合は理にかなっており、両社にとってウイン・ウインの取引だと好評価している。

何はともあれ、再統合はDISHの5G展開における資金不足の問題解決に多少なりとも貢献することは確かだ。

また、EchoStarは2GHz帯の「Sバンド」周波数を保有しているのも心強い。この周波数は低軌道衛星(LEO)による衛星直接通信(D2D)サービスにも使え、将来的には地上系の5Gネットワークにも使えるようになる可能性がある。

DISHはさらに7月26日には、ポストペイドのワイヤレスサービス「Boost Infinite」をAmazonを通じてプライム会員向けに割引販売することでAmazonと合意に至ったと発表している。

続々と出てくるDISHの奥の手に今後も期待したい。