AT&TのWi-Fiコーリングが使えなかった話


AT&TがFCCを説得してせっかく開始したWi-Fiコーリングが、iPhone 6sで使えなかったという体験談がThe Vergeに掲載された。

まずはAT&TのWi-Fiコーリング提供に至る経緯について簡単に触れておくと、Wi-FiコーリングはT-MobileとSprintが先行して提供していたが、AT&Tによればこれは違法だ。

電話サービスの提供にあたっては聴覚や発声が不自由な人でも緊急通報の「911」を呼べるように、TTY(Text Telephony)という技術が使えるようにしないといけないという規則があるが、Wi-Fiコーリングではこれが確実に提供できないからだ。

ただIP環境でこれを確実に提供しようというのは現実的ではなく、また固定電話などの代替手段もあることから、Wi-FiコーリングでTTYが使えなくてもそれほど大きな支障はないという見方もできる。

とは言え、違法にサービスを提供するわけにもいかないので、AT&TはきちんとFCCの許可を受けるべく、Wi-Fiコーリングの提供にあたってこの「TTY規則」の適用除外を求めていた。

FCCは関係者の意見も求めた上で、10月6日に暫定的ではあるが適用除外を認める決定を下し、AT&Tは晴れてWi-Fiコーリングが提供できることになったという次第だ。

このような経緯で、10月8日にAT&Tが開始したWi-Fiコーリングだが、AT&Tで使える対応端末は今のところiPhone 6/6 Plusと6s/6s Plusだけ。 そのうちの代表的なiPhone 6sが使えなかったというのだから、ことは重大だ。

この体験談を投稿をしたのは、The Vergeの編集者のChris Ziegler氏。実は同氏が使ったiPhone 6sはAT&Tから購入したものではなく、Appleから購入したもの。しかもAT&T向けのiPhone 6sではなく、T-Mobile向けのアンロック版iPhone 6sにAT&TのSIMを入れたもの。

同氏はもともとAT&Tを使うつもりではいたが、アンロック版のiPhoneの方が海外で使うときには便利だし、中古市場でも高く売れるということで、最初からアンロック版が提供されるT-Mobile向けのiPhone 6sをAppleから購入した。

これにAT&TのSIMを入れてWi-Fiコーリングをオンにしようとしたら、エラーメッセージが出てオンにできなかったそうだ。質問があるならカスタマーサービスに電話するようにとの指示もあった。

Wi-Fiコーリングのエラーメッセージ(The Vergeより)
Wi-Fiコーリングのエラーメッセージ(The Vergeより)

この原因としては、同じiPhoneといえども、AT&T向けとVerizon/T-Mobile/Sprint向けはまったく同じものではないことが考えられる。まずiPhone 6s/6s Plusのモデル番号が違う。AT&T向けはA1633/1634なのに対し、他社向けはA1688/1687。

AT&T版はWCS周波数(LTE Band 30)をサポートするが、他社版はサポートしないということもあるが、違いはそれだけではなかったようだ。

この違いのためにAT&TのSIMを入れたアンロック版iPhoneは、AT&Tが認証した端末ではないとAT&Tのシステムが判断し、そのアカウントではVoLTEが使えないようにしてしまうらしい。

Wi-FiコーリングはVoLTEにひも付けられているので、VoLTEが使えないとWi-Fiコーリングも使えないということになる。

この問題は今のところAT&Tのカスタマーサービスに電話しても解決できないようだ。ちなみにAT&Tで購入したiPhoneやAppleが販売するAT&T向けiPhoneではこのような問題はないようだ。

アンロック版には要注意。