速度制限の一番の犠牲者はYouTube


キャリアが実施するネットワークの速度制限の一番の犠牲者はYouTubeだった。

ノースイースタン大学とマサチューセッツ大学アマースト校が行った最新の調査によれば、米大手キャリアが実施する速度制限を最も多く受けたのはYouTubeだったと、Bloombergが報じた。以下、Netflix、Amazon Prime Video、NBC Sportsアプリという順序で、同様の速度制限が検出された。

この調査に使用されたのは、Weheというアプリ。これはユーザが使用しているキャリアについて、特定のアプリ・サービスが差別(典型的なのが速度制限)されているかどうかがわかるというもの。10万人以上のユーザがこのアプリをダウンロードして調査に参加した。

iOS用Weheアプリのスクリーンショット(Weheのホームページより)

このアプリを開発したノースイースタン大学のDavid Choffns氏もこの調査結果を作成したメンバーの一人。

調査は1月から5月初めにかけて行われ、Verizonについては11,100回以上の差別が検出された。AT&Tは8,398回、T-Mobileは約3,900回、Sprintは339回だった。

これは比率ではなく絶対数なので、ネットワークの規模やユーザ数によっても違ってくる。小さなキャリアほど差別が検出される件数も少なくなっている。

ユーザが知らされることなく差別が実施されていることもある。AT&Tは今年に入ってからいくつかのアプリについて差別を始めたそうだ。

キャリアごとに一定の使用量を超えたら速度制限する旨、提供条件で定めており、さらにプランによっても速度制限がかかるものがあり、高いプランを選べば速度制限が少なくなるようになっている。

そのようなルールに従って公平に差別が行われているのならまだいいが、問題はすべてのトラフィックが公平に扱われているかどうかということ。すなわち、特定のアプリ・サービス・コンテンツが優遇されて、それ以外のものが不当に制限されるといった心配はないのかということ。

その心配から、2015年にオバマ政権がネット中立性ルールを確立した。これで一応その心配はなくなった。ところがトランプ政権がこのルールを撤廃してしまったので、またその心配が出てきたというわけだ。

そこでそれを監視するために、このWeheアプリが脚光を浴びることとなった。米国だけでなく、これまでに161か国の2,000社以上のISPについて、50万回以上のテストが行われている。

今回の調査で、不当な差別が単なる心配ではなく事実として発覚したことになる。

このようなアプリのおかげで、キャリアは不当な差別をやりにくくなるという抑制効果もあるものと思われる。