AT&TのCEOの退職金がすごい


AT&TのCEOの退職金は溜め息が出るほどすごい。

AT&Tのランドール・スティーブンソンCEO(60歳)は今年の7月1日付けで退任する予定だが、同氏の退職金が6,400万ドル(約68.5億円)であることがわかった、とMarketWatchが伝えている。

人生80年とすると、同氏には退職後毎月約27万ドル(約2,850万円)の報酬が生涯に渡って支払われることになる。「毎月」ですぞ。

これはたとえば、一戸建ての家が毎月現金で1軒ずつ死ぬまで買い続けられるだけの収入が保証されることになる。夢のような話ではないか。

それだけではない。同氏にはこれまで毎年多額の報酬が支払われている。Techdirtによれば、同氏の年間の報酬額は2017年に2,872万ドル、2018年に2,912万ドル、2019年には3,203万ドルと、平均すると毎年約3,000万ドル(約32億円)となっている。

その他に、同氏は2,000万ドル(約21億円)以上に相当する自社株やストックオプションも保有している。

AT&TのCEOというのはそんなに儲かる商売なのか。AT&T自体は巨大買収を繰り返して肥大化し、巨額の負債を抱え、TVサービスの顧客は減り続けているなど、今のところ将来の見通しはけっして明るいとは言えない。

とりわけ、今は新型コロナの影響で多くの企業や消費者が打撃を受け、苦労や辛抱を強いられているときだ。同CEOも、新型コロナの影響でAT&Tは多大な経済的打撃を受けており、全世界の従業員を25万人くらい解雇しないといけないかもしれないとほのめかしているそうだ。

こんな状況でそれほど多額の報酬を受け取るCEOとは、いったい何者なのか。そして、こんな状況でCEOにそれほど多額の報酬を支払うAT&Tとは、いったいどういう会社なのか。

さらに、それと同等かそれ以上の報酬を受け取っている企業幹部がゴロゴロいるアメリカって、いったいどういう国なのか。

同CEOが4月に退任の意向を発表したとき、トランプ大統領は同氏をかなり痛烈に批判するツイートをしている。「CNNのようなクズのネットワークを許すような人はとっとと去るべきだ」とさえ言っている。

AT&TがTime Warner(現WarnerMedia)を買収したことで、トランプ大統領に批判的な「フェイクニュース」を流していたとされるCNNがAT&Tの傘下になったことから、日頃のCNNへの恨みをAT&TのCEOにぶつけたような感じだが、その怒りたるや相当のものだ。

しかも、そのツイートはまだこの退職金の情報が出ていなかった時点のものと思われる。

「こんなときだから退職金は全額コロナ対策のために寄付します」とでも言ってくれれば、同CEOに対する印象や評価は多少は違っていたかもしれない。