Twitterがコンテンツの検閲で揺れている。
ソーシャルメディアによるコンテンツの「検閲」は以前から問題になっているが、最近またまた大きな問題になった。
発端は2019年4月に遡る。ジョー・バイデン大統領候補の息子のハンター・バイデン氏のパソコンがデラウェア州ウィルミントンのパソコン修理店に持ち込まれた。
修理が完了したにもかかわらず、90日経っても引き取りに来なかったので、店主がパソコンの中味を確認したところ、バイデン氏が関わるウクライナの天然ガス会社(Burisma Holdings)とのやり取りに関するメールなど「やばい」内容の情報がごろごろ出てきたというもの。
New York Post紙がこの情報を入手して10月14日の朝に記事にして報じ、TwitterやFacebookでもその内容を投稿すると、Twitterがすぐに動いた。その情報の拡散を防ぐため、その記事へのリンクを含むツイートをすべてブロックするとともに、New York Post紙のTwitterアカウントを停止してしまった。その理由は、ハッキングされた素材に基づくコンテンツだからというもの。
Twitterは個人情報保護の対策の一環として、ハッキングにより入手した個人情報を含む素材に基づくコンテンツを発信したり、そのようなコンテンツへのリンクを含む投稿を発信したりすることを禁じる方針(Hacked Materials Policy)を2019年3月に打ち出していた。
Facebookはアカウントの停止などの強行措置は取らなかったものの、第三者による事実確認が済むまでこの情報の拡散を制限すると発表して、拡散防止の措置を講じた。
これに対し、ネットでは賛否両論が飛び交っているが、とりわけTwitterに対しては、これまでハッキングで入手した素材に基づくコンテンツを特に制限していなかったのに、今回突然制限するのはおかしいとの批判や、ソーシャルメディアが個人の投稿だけでなく新聞記事まで検閲するようになったらおしまいだなどの意見が目立つ。
10月15日の夜になって、Twitterの責任者のVijaya Gadde氏が「フィードバック」を考慮して方針を変更したと発表し、ハッキングに基づくコンテンツであっても、ハッキングした当事者が直接発信する場合や当事者と共謀して発信する場合を除き、削除したりブロックしたりはしないことにし、必要に応じてラベルを貼るなどで対応することとした。
Over the last 24 hours, we’ve received significant feedback (from critical to supportive) about how we enforced our Hacked Materials Policy yesterday. After reflecting on this feedback, we have decided to make changes to the policy and how we enforce it.
— Vijaya Gadde (@vijaya) October 16, 2020
ところが、この方針変更が発表されてからも、引き続きNew York Postの記事に関するツイートが投稿できないなどの苦情がユーザから寄せられた。これに対し、Twitterは、当該記事には個人情報が含まれているので引き続き制限の対象になっていると回答した。
10月16日になって、Twitterはまたまた方針変更し、New York Postの記事に関する投稿について、個人情報保護を理由とする制限はしないことにしたと発表した。当該情報は既に広く出回っているので、もはや秘密情報ではなくなったというのがその理由。
なお、FOX Businessによれば、10月17日の時点でもまだNew York PostのTwitterアカウントは停止されたままになっている。ハンター・バイデン氏に関する6件のツイートを削除しない限り復活しないことにしている。
方針がコロコロ変わって一貫性がないようにも見えるが、Twitterの柔軟性・即応性として評価できる余地もある一方、検閲に関して揺れ動いている様子もうかがえる。
もっとも、検閲するかどうかの問題も大事だが、検閲の対象となっている情報の真偽を解明することが重要だ。