Teslaの意外な収益源


Teslaが2020年に通年ベースで創業以来初めて黒字に転じたが、意外な収益源が明らかになった。

Teslaが1月27日に発表した2020年通期の決算は、売上が315億3,600万ドル、純利益が7億2,100万ドルと過去最高で、かつ創業以来初めての黒字達成というめでたい結果となった。

創業以来赤字が続き、一時は資金が枯渇する危機に瀕したことさえあったが、このコロナで苦しい状況の中でよくぞ収益改善を成し遂げたと、祝福ムードが漂っている。

CNNがそれに水を差している。その純利益は車の販売によるものではなく、「dirty little secret(ちょっとした汚い秘密)」によるものだとしている。

2020年の自動車部門の収入(272億3,600万ドル)のうち、15億8,000万ドルは「regulatory credit(規制クレジット)」の収入となっている。

米国の11州では規制によりゼロエミッションの車を一定割合販売しないといけないことになっており、それを達成できない自動車メーカーは違反金を支払うか、ゼロエミッションでない車を販売できる枠(クレジット)を他のメーカーから購入することになる。

ちなみに、その11州とは、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、メーン、メリーランド、マサチューセッツ、ニューヨーク、ニュージャージー、オレゴン、ロードアイランド、バーモント。いずれも民主党が強い「ブルーステート」だ。

Teslaは全車がゼロエミッションなので、一定割合販売の規制を難なくクリアした上に、他のメーカーにクレジットを販売する余裕がある。

そのクレジットを販売したことによる収入が2020年は15億8,000万ドルという大きな金額で、もしこれがなかったら8億5,900万ドルの赤字になっていたということだ。

この「規制クレジット」はここ数年毎年発生しているものであるが、2016-2019年は毎年3億ドルから6億ドル未満の範囲だったのに、2020年は異常に増え、この5年間の「規制クレジット」収入の約半分が2020年のものということになった。

そういうわけで、2020年の黒字転換はこの「規制クレジット」の増額のおかげということになり、Teslaの収益構造が根本的に改善したわけではなかった。

この「規制クレジット」というのは、コストがかからずに収入だけが発生するという魔法のような収入源だ。地球温暖化問題におけるCO2排出枠に似ている。

もともと何もなかったところに、規制を創出するとともに規制を逃れられる「枠」を設定して、それを売買できるようにするという、何やら怪しげな仕組みだ。